ルイスの転換点

数日前のnetnewsで知りましたが、中村メイコさんが亡くなったそうです。底抜けに明るく私の暗い幼少期に明るさをもたらしてくれた方です。
以前の日記でも記しましたが、コミカルな曲、【田舎のバス】を歌っていた方です。
中村メイコさんで他に思いつくのはラジオ番組の【パパ行ってらっしゃい】。
小学低学年の頃に放送されていました。放送時刻が朝の登校前って事もあり時計代わりとしても聴いていたように思います。
【キーたん】という未就学児が主人公で近所の【ゴン】という腕白坊主のお兄ちゃん、同じく近所の気の強い我儘なお姉ちゃんである【マミ】ちゃん達が織りなす日常を描いたものです。その3名の子供達の他にキーたんのママまで合わせて4人分の声を担当していたのが中村メイコさん。子供心にも「凄い人だなあ。」と感心したものです。ゴンのお母さんがゴンを呼ぶときの、「ゴ~ン、ゴンゴンゴンゴンゴ~ン。」という呼び方を今でも思い出します。
キーたんのパパはサラリーマン。それ以前にもサラリーマン家庭はありましたが急に増えたのはやはり戦後。この番組の放送時期くらいからですね。
当時はTV放送も一部始まっていましたが、庶民にとって家庭内の娯楽というとラジオが中心でした。
暫くしてTVが普及し始めた頃、【水道完備ガス見込み】なんてTVドラマが放送されるようになりました。題名の如く水道は敷設されているがガス管は未だで敷設予定という事で、当時急に増え始めた新興住宅地が舞台である事がわかります。溌溂とした主題歌が軽快で当時の右肩上がり経済をよく表しています。
政府主導で戦後復興の一端として工業化が推し進められていた頃でもあり、それがラジオやTVドラマによく反映されています。
この頃は都市部の工業化に伴う労働力の需要に対し農村部の余剰労働力を供給源として、毎年中学の卒業時期には集団就職として農村部から都市部へと人口移動がありました。今のUR(Urban Renaissance Agency)の前身である住宅公団が都市部の人口増大に対応するために各地に団地や新興住宅地をつくり始めたのもこの為です。
しかし工業の発展と共にその労働力需要を農村部からの供給だけで賄いきれなくなります。経済用語としてよく使われる、表題の【ルイスの転換点】の到来です。
西欧諸国などは戦後の経済復興の労働力を中東などからの移民に頼りましたが、日本は敢えてそれはしませんでした。今でも外国人の不法就労を摘発、強制送還などを行っています。どちらが良かったかは一概には言えませんが、西欧諸国の社会の階層化、治安の悪化を考えると門戸を閉ざしていた事は我々の文化を守る上で良かったのではないかと思います。最近でこそ外国人による犯罪が増えていますが未だ欧米の比では有りません。
ルイスの転換点を過ぎると労働力不足から労働単価が上がります。今まで廉い賃金で成り立っていた企業経営は大きな難題に直面します。一部は廉い労働力を求めて海外へ、一部はイノベーションにより効率化、機械化を図り労働力不足に対処して行きます。そこで必要とされる労働力が知識労働という新たな労働力です。流石は戦後の為政者達。こうなる事を予測していたのですね。
戦後、旧帝大以外に職業訓練所などが全国で格上げされ新たな大学となりました。私の頃は二期校と言ってました。旧帝大が一期校ですね。
それに伴い私立大学も乱立、当然私立高校も同様。しかしそれらのおかげで知識労働者が大量に世に送り込まれます。(知識労働者と言うのはドラッカーが言う所のKnowledge Workerですね。)
この人達は私も含めて団塊の世代の中で大多数を占めています。この知識労働者達がイノベーションを図り労働力不足を解消しかつ自分達自身もそこそこの報酬を得るようになりました。その稼ぎの一部は消費に回り経済活性化に一役買います。そして余剰資産は預金や投資に回りこれもまた経済活性化の一因となります。今やこの日本の中間層の資産は一人一人は少なくても全体としてはバカにできないほど大きく膨れ上がっています。一般的に個人資産家と言われていますね。
いやはや中村メイコさんからとんでもない方向に思いが飛んでしまいました。メイコさんの本名は五月(さつき)。英語ではMay(めい)。宮崎駿のトトロに出て来る姉妹のサツキとメイって中村メイコさんのパクリだったんですね。
しかし戦後の為政者達には感謝しかありません。戦後復興から経済発展に至る道筋を付けてくれたのは彼らのおかげ。
リベラル左派なんぞに任せていたら今の日本は無かったでしょう。未だ北朝鮮と同じ生活を強いられていたに違いありません。当然韓国も同様です。韓国の【漢江の奇跡】は日韓請求権協定で膨大な資金が入ったから。それ以前はあの北朝鮮よりももっと貧しかったんですから。(北朝鮮が韓国より豊かだったのは日本が残したインフラが無傷で手に入れられたから。それすらも保守整備を怠って今じゃ使い物にならないようです。)