友人F

昨日記したベンチャーズで思い出しました。
中学三年のクラスでFと知り合いました。大柄でデブ、いつもはにかみがちで性格は鷹揚、成績は低空飛行でも皆からバカにされずにいたのはその体格と人柄のおかげだったのでしょうか。
ラジコンが趣味という共通点もあり席が隣同士になった事から急に親しくなりました。
彼を通してそれまであまり接点の無かった連中とも親交を深めるようになりました。皆大きな体躯でスポーツ万能、少々不良っぽい所がありそれまでの私とは全く違う世界の住人のような存在でしたが、付合うようになり運動音痴引っ込み思案の私も徐々に積極的な人間になっていったように思います。
Fは家業が左官屋で皆から「シャカンヤ」とよくからかわれる事もありましたがムキになって怒るようなことは無く世の中を達観しているかのようなところがありました。
テストの答案を返された時よく言っていました。「また饅頭だ。」見ると0点。ついお節介で「ここはこうやればいい。」と教えると直ぐに理解します。頭が悪い訳ではないようです。以降よく教える事が増えたように思います。
ある日Fが言いました。「先生に聞かれたからゴリラ(私の事)に教えてもらったと言った。」
クラスの担任は数学の教科担任でもあり、いつも饅頭を取っていたFが急に正解を書くようになったので怪訝に思ったのでしょう。おかげで担任の私に対する心証も今まで以上に良くなったようです。
Fの家に行った時は驚かされました。まず外にはトヨタのクラウンが停まっていました。当時は少々お金持ちの家でもせいぜいパブリカ、普通は車無しかあっても軽自動車があたりまえの時代でしたから。
そして彼だけの部屋があります。その中には作りかけのラジコンの飛行機やボート、当時流行のトリオのコンポーネントステレオ、そしてエレキギターにアンプ。
お父さんは左官屋の職人というより多くの職人さんを雇う個人経営者だったのです。
ドレミレドミレミレ〜と口ずさみながらベンチャーズの曲のさわりを聴かせてくれました。
これだけ遊ぶものがあれば勉強などする時間は無いわなあ。授業中も他の事ばかりやっていたし。
親もこうやって財を成しているのですから地頭が悪い訳ではありません。そして彼の鷹揚さの原因も解った気がしました。【金持ち喧嘩せず。】を地で行ってたんですね。
帰りにスパン2mもある造りかけのグライダーの主翼をくれました。「もう要らなくなったから良かったら持って行く?」
こんな気前の良さもあり皆に好かれていたのだと思います。
F、今はどうしているかな〜。