紙一重

1月4日 丁度この時期は越年登山から皆が下山する頃です。
下山後、食堂や喫茶店で最初に見るのは新聞三面の遭難記事。或いはTVの遭難ニュース。
物見遊山で人の不幸を楽しんでいるのではなく、自分達が無事に帰って来た事を確認しているようなものでした。確かにそこにいるのは疑いようの無い現実なのですが。それと他の山岳会の知人達が新聞沙汰になっていないことの確認と。
もう冬山に行くこともなく遭難記事などさほど興味もないのですが、癖とでもいうのでしょうか遭難の見出しをみつけるとつい記事を目で追ってしまいます。そしてそれがどの辺りなのか想像してしまいます。
細心の注意を払っていても起こってしまう事もあるでしょうし、無謀と言われそうな山行でもなにも起こらない事もあります。遭難するかどうかなんて私には紙一重の事のように思われます。
そんな事もあって遭難の当事者を批判などする気は全く持っていなかったのですが、ここ10年ほどの中高年登山ブームに対しては異を唱えたくなっていました。「常識があればそんなバカな事にはならなかっただろう。」こんな言葉がつい出てしまうような事ばかり。
それが今年は少し変わってきたようです。ひとつは登山ではなくボーダーがゲレンデ外に迷ってしまった件です。
第一報を目にした時は「ああ、こりゃダメだな。」と思ったのですが翌日(今日の事です)には自力下山中の姿を発見とのニュース。メットにサブザックを担いでいる姿に「おぬし、やるな!」
当然雪洞でも掘って夜をやり過ごしたのでしょう。食料や防寒着だけでなく火器(たとえキャンドルでも)も携行していたのだろうと推測しています。たぶん知識だけでなく経験者もいたのだろうと思います。
騒ぎを起こした事への償いは当然して然るべきですが、その場の状況を的確に判断し最悪の事態を避けられたのは喜ばしい事です。コース外へ出る事は許されない事ではありますが、ついいい気になって羽目を外してしまったのでしょう。いや常習者だったかもしれませんがこれを期に自重するでしょう。行きは良い良い帰りは恐い。降りの軽快さとは比較にならないほど登りが大変なのがスキーやボードの特徴です。常に地形を見ながら到達地点を決めて降る必要があります。
そしてもう一件、奥穂での遭難ですが連絡が携帯電話でなくアマチュア無線だった点。偏見かもしれませんが、携帯電話=無謀中高年 を連想してしまいます。携帯電話は便利ではありますが山岳地帯ではサービスエリア外の地域が多く、遭難リスクの回避の為なら例え免許が必要だとしてもアマチュア無線、或いは免許不要の市民バンドトランシーバを携行すべきだと思います。言い換えれば真摯に山に向かっている人は多少手間隙がかかってもそれなりの通信手段を選んでいるという事です。昔の山岳会では市民バンド(ソニーのリトルジョンなど)かアマチュア無線(144MHz:一般的に、2(ツー)メーターと呼ばれていました。)のトランシーバーを携行していました。山岳会で免許取得の勉強会を行ったりもしていました。
携帯電話でも無いよりはマシですが、登山者自身の安易さを感じさせます。そういった易きに流れる人に限って軽率な山行をするものです。
それ以外にもやはり携帯電話による救助要請もあったようですが、前記の二点が大分以前と変わってきたように感じ、良い流れだと自己満足しています。
今年は若者達が山へ大挙して戻ってきましたし、中高年嫌いのtanuoさんにはとても喜ばしい事です。(自分も中高年、いやもうクソジジイなのですが)
この若い人達が基本に忠実にリスク回避を学んでくれることを願っています。
事故を回避できるかどうかは紙一重といいましたが、基本に忠実に行動する事がその紙一重の差に繋がるのです。