新しい流れ?

最近鈴鹿関係のNet記事で、2月12日に起きた御池か藤原での遭難に関するものをよく見かけます。
なんの縁もない一般登山者達が捜索に協力しているそうです。
未組織、無保険、単独行、名古屋在住、無届け…。
今の中高年登山ブームで三重県滋賀県の方も増えているとは言え、やはり名古屋からの人がかなり多いようです。
遭難者を悪く言うつもりはないのですが、私も含め褒められた事で無い事の典型ですね。
「三(さん)人寄れば山(さん)岳会」なんて言い回しがあったように、昔は未組織の方が少ないくらいで例え数名しかいなくても山岳会を名乗っていました。
会則で単独行を禁止している山岳会もあったくらいでこれも推奨されるものではありませんが、さほど硬い縛りではなく弾力的に運用していたように思います。
蒼滝橋駐車場、蒼滝トンネル駐車場共に停まっている車は名古屋ナンバーが殆どでした。藤内だけの例外だったのかも知れませんが、当時は圧倒的に名古屋人が多かったように思います。他所から来て他人の庭先を我が物顔で闊歩する。そして地元の人々にかける迷惑なぞ一顧だにしない。他所から来たのならもう少し遠慮があっても良さそうなものです。
思い起こすと、私、当時から御在所では登山届けなぞ一度も出した事がありません。但し鈴鹿以外へ行く場合は会のボスには連絡していました。山行内容により書面で会に提出する場合とTELで済ませる場合と使い分けていましたが。
まあ連絡が無い場合は藤内と決まっていたようなもので、そこなら顔馴染みの他の会の人も大勢いる訳です。
その癖が付いてしまっていた所為か大きな声では言えませんが、御在所通いを再開して10数年 一度として届けは出していないのです。
鈴鹿にやってくる人達の殆どが、この困った問題5点セットを丸抱えなのだろうと思います。
私に出来ない事を人がやるとは思えません。せめて5点セットを4点に抑える、3点に抑えるなどすれば事故そのものも大幅に減るでしょうし事故後の対応も取り易くなると思います。


最も減らし易いのは単独行でしょう。同行者が居れば不慮の事故にもすぐ対応できます。
そういえばうちのボスがよく言っていました。「単独行者がいたら声をかけてやってくれよな。」自分は変なヤツがいたら関わり合いにならないようわざと距離をとるようにしていたくせに。それでも冬合宿中に一緒になった単独行者と行動を共にし、後日入会してもたった事もあります。遭難のリスクを減らすという点においてはこの声かけも大きなファクターかと思います。


悪名高き名古屋人ですが、他人の庭であることを認識し多少遠慮がちな行動をとるだけでもリスクを大きく軽減できます。事故発生時すぐ対応してくれるのは地元の人達や三重県下の警察消防なのです。その税金を負担しているのは三重県の人々です。そのことを念頭に置いているだけでも軽はずみな行動を控えようという気が起こります。


登山届け、事故があって初めてこれが出されていたかどうか調べる訳ですし、途中で行動予定を替える事も充分有り得ます。「行動を縛られるのが嫌だから出さない。」というのが未提出の最大の理由かと思います。
しかし途中でルートを変えても人の取る変更は凡そ見当が付きます。例えルートを変更したとしてもどの山域に入ったかが解かるだけで捜索範囲もグンと絞れます。


最後に未組織、無保険について。
今回の遭難への対応、未だ嘗てなかった事が起こっているように思います。
今までにも未組織の単独行者の遭難はいくらでも起こっていました。地元の人達が捜索に協力してもいつまでも永遠にできる訳ではありません。一週二週と経てば捜索も打ち切られ、家族が自ら捜索するより手はなかったのですが、今回はNetを通じて自己組織化するかのように多くの協力者が現れています。
昔は山岳会に属してれば県の岳連を通じ他の山岳会からも応援があり、かなり大規模な捜索が行われました。
「どこかで事故が起こらないかなあ、ただで山に行けるのに。」こんな言葉が出る事が示すように、山岳会では山岳保険加入が義務付けられており当時の相場で一人当たり100万円が捜索費用として充てられていました。5人いれば500万円、10人いれば1000万円を限度として使う事が出来たのです。尤もヘリが1フライト70万円〜100万円でしたので5回飛ばせばそれで500万円は消えてしまいましたが。
ところが今回は遭難者とはなんの縁もゆかりも無い人達が協力しているようです。それも自己負担で。
これって素晴らしい事だと思いませんか? この自己組織化にNetが関わっているとしたらNet自体に大きな可能性が秘められているという事です。Netの功罪の内、大きな功です。
昔多くの山屋達の受け皿となっていた山岳会が今ではほぼ休眠状態のようです。Netを経由してその代役と成り得るものが起こりえるのではないでしょうか。混沌か自己組織化するか、丁度今が【カオスの縁】のように思います。なんらかの条件を満たす事で自己組織化が一挙に進むのではないか?と思う訳です。
これをきっかけに同じ地域同じ山域をホームゲレンデとする人達の組織化に繋がり、リスク軽減、情報の共有へと繋がれば凄く良い事です。そして数が纏まる事で山岳保険への加入も容易になります。保険金という担保により捜索費用の心配が無くなればもっと思い切った手段もとれます。また協力者の金銭負担も軽減されもっと多くの人的投入も可能になります。とまあこんな事に思いを馳せている次第です。


しかし今までに無い多くの方々の協力にも拘わらず、相変わらず見つかりませんねえ。
協力している方々に水を注す訳ではありませんが、ここまでくると雪が融けるまで出て来ないように思います。10数名が1m間隔で横に並びゾンデを打ち込みながら捜索した所から、雪が融けてから遺体が見つかった事もあります。
「あそこってくまなく捜したよなあ。」「なんで見つからなかったんだろう。」
こんな不思議な事が起こるのが山なのです。