生きのびる力

クライスラーがいよいよ破産のようです。いずれGMも。
昨日帰宅したT哉が「クライスラーへの債権が回収できない。」などと偉そうな事を宣っていました。
T哉の勤め先に限らず、そして日本のサプライヤーに限らず、世界中の多くの企業が影響を受けます。それほどまでに自動車産業は裾野が広いのです。


もう20年以上も前になるでしょうか、日米間の貿易不均衡が取り沙汰され、自動車、半導体などは日本の輸出の自主規制、農産物、自動車などの輸入関税の撤廃或いは軽減が両国間で取り決められたのは。
いわゆるガイアツと呼ばれる不条理とも感じられる力ですが、そのガイアツにより一時的に不利な状況に立たされたものの、日本の自動車産業についてはそのおかげでより鍛えられたとも言えます。
いつの世にも、どんなところにも不条理な力関係は存在します。だからといって喧嘩別れしていたのでは一歩も前へ進めません。
それぞれのおかれた立場の中で如何に最善を尽くすか。これしか生きのびる方法はありません。
米国はもともとロビー活動の盛んな国です。歴史も何もない中で民主主義を発達させてきた結果の産物かもしれませんが、それはそれで米国の文化でもあります。欧州も含めた米国以外の国々からすると異常ともとれますが、他国の文化を否定するよりその状況の中での精一杯の努力の結果が自主規制であったのです。
過激なジャパンバッシングとロビー活動の結果、日本車の進出が抑えられ不当な役員報酬を受け取ったビッグ3の経営者達はこれに味を占め、本来力を注ぐべき「顧客に受け入れられる車の開発」を怠ってしまったのです。当時の一時的な勝利が自らの生きる力を弱めてしまい、結果として四半世紀後の今日、破産の憂き目に会ってしまったように思えます。
立場を変えると同じ事が日本の農業についても言えます。異常な程の過保護の結果、全くひとり立ちのできない脆弱な産業に貶められてしまったと言えます。
自給率云々などと言うのは詭弁です。人にしても産業にしても生きのびるためには適度な負荷は常に必要です。いきなりは無理にしてもワンステップづつ負荷を克服し国際競争力を付けていくのが健全な方法です。競争力があり儲かる産業であれば必ずその産業に従事する人が増えて行きます。そうなれば自給率なぞ自然に高まります。


世界的な不況の今、経済活性化の為ドイツでは新車購入に補助金が付与されています。その結果生産も左程落ち込まずそれなりの効果は出ているようです。それを真似てか日本でもエコカーへの買換えに減税と補助金を付与する法案が出されています。可決発効はもう秒読み段階のようです。
しかしこれって20数年前の米国政府がビッグ3に対して行った保護政策と似ていませんかねえ。返って自動車産業自身の自助努力を損なう事にはならないでしょうか。
補助金による買換え促進は一時的なものでしかありません。謂わば将来の買換え需要を先食いするだけです。ここで買ってしまった人達は次は10年後でないと買換えしないでしょう。
かといってインフラはもう充分すぎる程出来上がってしまい、今着工しているものは不要と言えるようなものが大半です。
次の飯の種となりえる産業の育成にもっと予算を当てるべきと思います。即効性は期待できませんが、農業の活性化、教育、それにオバマさんの専売特許とも言えるグリーン産業の育成、等々いろいろ候補はあります。
今日の飯を心配するより明日の飯、明後日の飯を心配して欲しいです。たとえ今日はひもじい思いをしても明日、明後日に希望が持てるなら若い人達も我慢してくれるものと思います。