温故知新

夕べ帰宅後雑務をこなしていると、かみさんが点けっぱなしにしていたTVで興味深いものが放映されていました。
それでつい手を止めて見入ってしまいました。
それは、生麦事件に端を発し薩英戦争にまで発展しながらもその後急速に薩英間の交流が深まりそして薩長同盟明治維新へと繋がって行く流れを解説してゆくものでした。歴史書では表面的な事しか語られないのに対し、当時の人々の心情、思想など生々しいリアリティに沿って歴史の流れを紐解いてゆくもので、歴史とは本来こういったものなのだと思わしめるものでした。
日本全体は言うまでもなく薩摩一国の中でも攘夷と開国に揺れる中、薩英戦争にて攘夷の愚かさを思い知らされ英国との講和をきっかけとして急速に英国との仲が深まって行きます。英国にしても軽く見ていた薩摩という国とそれを動かしている人々の偉大さを知り、お互いが尊敬しあいながら国交を深めて行くことになります。
薩摩同様長州も下関戦争において攘夷の無意味さを知る事になります。犬猿の仲であった薩長が手を結んだのは、歴史上は坂本龍馬の功績として小説などでも通説となっていますが、実際は薩摩がそう仕向けたようです。薩摩自身が公然と英国から仕入れた武器を長州に供与する事はできない。そこで第三者亀山社中(龍馬)を通じて行った。その張本人は小松帯刀NHK篤姫で急遽歴史の表舞台に飛び出した人です。彼は維新後は外務大臣に相当する職務に就いていたそうですが、その時の職務遂行を支えたのが薩英戦争後急速に親交を深めた英国との人脈だったそうです。
最後に語られていましたが、薩摩と英国が親交を深めた理由として双方とも現実主義だった事が挙げられていました。
日本には珍しくその当時からプラグマティックな思想が息づいていたんですね。


そして現在。衆院選に向けて小政党、新党がなりふり構わず合従連衡に明け暮れています。
主義主張も何処へ消えてしまったのか、よくもまあ思想の違う者同士がくっ付けるものです。所詮元々の主張が嘘だったって事でしょう。主張より戦術優先、職を失い食べて行けなくなるより何でもいいから議員歳費確保の為だけに動いているとしか見えません。これも政治を職業とする政治屋(政治家ではありません)の弊害がもろに現れていると思われます。政治なんていうのは食うに困らない資産を持っている人が経世済民の為、滅私奉公の精神で行うものです。サラリーマン政治屋が主義を通すのは先ず無理でしょうね。
橋下さんももう少し信念のある人かと思っていましたが時代錯誤のナショナリストとくっ付くし。あの人って既に過去の人でしょ。生麦事件当時の攘夷派そのものです。武力行使或いはそれをほのめかす事の無意味さが全く解っていません。歴史を上っ面でしか見ていない人には歴史が指し示してくれている解答が全く読み取れないようです。
今、尖閣諸島竹島が問題になっているのは日本に軍隊が無いからではありません。日本人は軍隊では無いと思っていますが海外の人の目には自衛隊は明確な軍隊と映っています。
尖閣武力衝突になった場合のシミュレーションを米国がやっていましたが、通常兵力だけでは互角かほぼ自衛隊有利との事。それ以外にクリントンさんが尖閣日米安保の範囲内と名言していますから自衛隊以外に米国も加わるという事です。
そして中国海軍には戦いだけでなくロジスティクスの経験もありません。戦いにおいてロジスティクスは最も重要なファクターです。それが欠けていた為に緒戦では勝っても結果的に大敗に追いやられた例は枚挙に遑がありません。
湾岸戦争当時の米軍のロジスティクス、例えると人工10万人の都市が一夜の内に別の町にそっくり移ったのと同じだったそうです。
そしていざ戦争となったら、中国には補給を支えてくれる友好国家が一国もありません。海で接する他国との間で尖閣と同じ問題を起こしている最中ですから協力してくれる訳がありません。
ではなぜこんな問題を起こしているのか? それは今の日本政府(M党政権)の態度が曖昧だからです。丁度生麦事件の頃の徳川幕府の対外姿勢と同じです。それに対しジャブを入れながら様子を窺っているのです。
角栄さんが日中国交正常化を果たした頃を思い起こして下さい。中国は戦争賠償も領土問題も何も求めませんでした。なぜでしょうか。
当時の日本は経済力という大きなソフトパワーを持っていました。外交上の力はソフトパワーで決まります。当時の中国は、薩摩藩が薩英戦争後に敵であった英国に教えを乞うたように、国交回復と同時に過去の侵略者に対し近代化の教えを乞うたのです。
今中国は急速な経済発展でもの申す中国になろうとしています。かといってまだまだ科学、技術革新において日本に追いついていません。軍事的にも先に述べた状況です。
反対に日本は長いデフレトンネルから未だ脱却出来ずにいます。そして国交正常化当時の指導者達がいなくなった今、親日派が極端に少なくなっています。だからこそ武力による威嚇よりもソフトパワーを強める事が必要です。お互いが軍拡に走れば東西冷戦時の二の舞です。
もう一言、TPP反対を謳っている亀さん、この人も生麦事件の頃の鎖国派と同じですね。150年も経っていると言うのに。ほんと化石のような人です。と言うか、政治屋業で食っていく為の票田が欲しいだけって事が丸見えです。本来どう有るべきか、大所高所からものを見るなんて事、サラリーマン政治屋には期待できる訳ありませんね。


最後に薩英戦争から英国について。
戦争の人的被害は英国の方がずっと多くいわば英国の負け戦でした。議会への報告に窮したのでしょうか、薩摩への砲撃から火災が起こりおりからの強風で街に広がり甚大な被害となった事を英国側の戦果として報告し、それが返って英国軍が糾弾される原因となったそうです。軍隊同士の戦いについては寛容な議会も非戦闘員への攻撃は人道的にも許せなかったという事。
我々日本人は「戦争だから何でも有りで仕方がない。」と考えるのですが、現在の国際法上でも非戦闘員の殺傷は厳しく禁止されています。
当時から英国にはそんな精神的土壌があったのですね。さすが紳士の国。
またこの国には昔からイノベーションを育む土壌がありました。ワットの蒸気機関からスチブンソンの機関車、そして産業革命もこの国から世界中に広がったのです。
大陸から狭い海峡だけで隔てられた島国、ドーバー海峡対馬海峡かの違いだけで日本も同様の立地です。薩摩だけでなく日本も昔から数々のイノベーションを起こしてきました。
サッチャーさん以前の英国は長く経済低迷に苦しんでいました。日本は今まさに経済低迷のさなかにいます。ソフトパワーのひとつである経済活性化は最重要な課題です。


夕べ帰宅前にかみさんとディナータイムデート。その時にかみさんが「選挙はJ党にしようね。円も安くなるし。」
事あるごとに塩漬けの外貨預金の事を言われます。
最近A倍さんの威勢が良いですね。その発言のおかげで現在USDが82円台。それに対し日銀総裁が反論していました。またA倍発言に反対する論調もよく見かけます。曰く「中央銀の独立性が損なわれる。」
でもねえ、いまの日銀なら独立性など損なわれても構わないと思いますよ。米国FRBはインフレ防止と同時に雇用にも責任を担っています。だから多少のインフレも視野に入れて金融政策を行っています。翻って日銀の場合は目標はインフレ防止のみ。今のデフレの時期はなにもすることがありません。失業率がいくら上がろうがインフレにさえならなけりゃ良いと考えているのですからデフレ脱却などしてもらっちゃ困る訳です。
嫌がる日銀を押さえつけて量的緩和を推し進めたのが小泉政権での竹中さん。さすが経済学者さま。おかげで当時は1USD=125JPY辺りを推移していました。外需産業が活況でデフレ脱却も目前ってところでした。その後のJ政権も多少の揺れ戻しはあってもほぼ同水準を推移していました。
リーマンショックで米国がQE実施、それによる円高もありましたがそれにもましてもっと酷い状態にしたのがおバカなM政権。
米国がやるとQE、日本がやると量的緩和。表現が違いますが全く同じ事。金利が下げられなくなった場合は強制的にこれをやって通貨の供給量を増やす訳です。クワンタテーティブ・イージング(量的に容易に)=量的緩和 FRBバーナンキさんがやる前に竹中さんも日銀を説き伏せやってたんです。
A倍さんの経済ブレーンがこの流れをくむメンバー達。過度な期待はせずとも、少なくともM党政権よりはずっとまともな結果に繋がると思います。その積み重ねがソフトパワーの増大と対外的な諸問題の抑止力に繋がるのです。