金銭感覚

かみさんによく言われる。「あんたの金銭感覚はズレている。」
さすがに子供達は露骨にそんな言い方はしないが、やはり素振りからそう思っているであろう事は解かる。
子供の頃からの貧乏性が染込んでいるのか元来ケチである。そして物価の基準が20代の頃のままである事も手伝い、現在の物価について行けないのである。
かみさんと一緒になってからというもの、全て支払いはかみさん任せ。自分で払わないものだから時代と共に変化して行く物価の動きが全く解からないのである。そして偶に見かけた価格と20代の頃の価格とを比較してしまい、「なんでこんなに高いの?」などとトンチンカンな言葉を発してしまう。


数年前EPIのガスバーナーが調子悪くなり、わざわざ買い換えるのも勿体ないからと、ずっとプリムスのガソリンコンロを持ち歩いていた。昔のブスに比べれば軽量コンパクトでありそれなりに用は足してくれる。しかし難点もある。
今年の冬、狭いツェルトの中で焚いていた時にOさんに指摘された。「これって、滅茶苦茶目が痛くならないですか。」
そんな事はあたりまえの事と全く気にしていなかったが、言われればその通りである。その事を気にしだすと気になって仕方が無い。「なぜ今まで気にせず平気だったんだろう?」不思議なくらいである。それがあたりまえと思っている者にとっては、人に指摘されない限りずっと当然の事なのである。
それ以来である。ずっと持ち歩いてはいるが、どうも使うのが憚られる。目が痛いという事はそれなりに目にも良くないのだろう。という考えが終始頭を支配している。夏場は良いにしても、だんだん寒くなるにつれ、使用を強いられる機会も多くなる。
ここで一念発起。ガスバーナーを新調する事にした。どうせ本番に行く事もない。鈴鹿だけならガスで充分。予熱も不要で利便性は高い。また圧電式ならライターが不調でも問題ない。
という事で早速Netで調べてみた。今ではいろんなメーカーから各種製品がラインナップされている。種類が多すぎて迷ってしまう。そして小型軽量化も進み、100gを切っている物もある。体力の衰えつつあるジジイとしては1gでも軽い方が良い。
そこで目に留まったのがイワタニプリムスのP-113というもの。2,300kcal/h 76g ナントカ方式とやらで炎が横に広がらず真上に細く上がるらしい。上に鍋をおけば点で当たるが鍋底に沿い炎は広がる。構造上風に強いらしい。プリムスといえばスエーデンの老舗である。日本ではイワタニの名が付いているが、昔からの山屋にとってプリムスの名は安心の印でもある。
訳の解からないポッと出の三流メーカーよりずっと信頼できる。
機種が決まったところで発注。以前ゴアの合羽を格安で買った山渓オンラインで注文した。売価5,350円が前回のポイントが使え、その値引きが990円。結局送料もかからず4,360円で済んでしまった。もちろんクレジットカードの決済である。
昔の山道具屋での一般的な2−3割の値引きでも5,000円〜10,000円くらいが相場だった。なんだ、バーナーって昔から値段は変わっていないのか。まるで玉子並み。いや最近では物価の優等生の玉子でさえ大幅値上げをしている。こんな経験ばかりしているから、かみさんに「あんたの金銭感覚はズレている。」と言われてしまうのだろう。
とは言えやはり4-5,000円はまるビ親爺にとって大金である。これを買う決心をするには清水の舞台から飛び降りる決断を迫られるのである。今は高価な買い物をしたという満足感と達成感に酔いしれているところ。


先週の御嶽山往復のガソリン代は軽く6,000円を超えていた。それには全く動じることもなく払っておいて、4,000円少々のガスバーナーには決断を要するってやはり変?
変なのは金銭感覚だけではないようだ。まだ使えるガソリンコンロがありながら、ガスバーナーに手を出したって事に後ろめたさを感じている所為かもしれない。
蚤の心臓しか持ち合わせていないtanuoさんはこんな細かな事にいつもくよくよしているのです。