御在所の七不思議

と言ってもまだ発見されていないものもあり、とりあえず今わかっているものから逐次取上げてみたいと思います。

① 裏道の不思議
もう30年以上前の事。国見峠から裏道を降っていたら、いつもの道とは別に国見尾根側に山腹を登って行く顕著な踏み跡があった。
「あれ? こんなところに道なんてあったかな。」
相棒と顔を見合わせ、「チョット行ってみようか。」
(このころは変な所をうろつく事が多かった。)
高さにして数10mほど登った後はすぐ降りとなり裏道にまた合流した。
そこは国見尾根上の、不動谷と北谷の分岐への登り口より、少し上の大きなルンゼ状の広場だった。
国見尾根に突き上げているこのルンゼの右岸側から山腹に沿うように合流していた。
「えらい近道だな。」と驚いてお互いの顔を見合わせた事を憶えている。たった一度のアップダウンで前壁の前や藤内沢出合などを一気に端折ってしまったのである。
そして何週間か後、また裏道を降る事があり、「この前の所から降りようか。」と相棒と意見が一致したのである。
ところが、たしかこの辺りだと思う所にそれらしい登りが無いのである。二人してああでもない、こうでもないと探し回るが結局見つける事はできなかった。まるで狐につままれたようであった。そして下の合流点にもここへ降ってこれそうな所は無かった。
その後あの道は未だに発見されていない。


相棒との昔話によく出てくるこの道、「きっと四次元空間に足を踏み入れていたんだ。」と二人とも信じている。運良く元の世界に戻る事ができたから良かったものの、あのまま帰って来れなかった事も充分考えられるのである。人はこれを神隠しと呼ぶのだろう。そして遺体となってとんでもない所で発見される場合もある。迷いようの無い所で地形も熟知している筈の人が何故? と訝るむきもあろうが、これらは全て山の神様の悪戯なのである。
ふと見覚えの無い所に踏み込んでしまったと思った時、あなたは既に四次元空間に迷い込んでいるのかもしれません。