The Sound of Music.

夕べいつものように就寝前の睡眠導入剤代わりにTVを点けた。
可愛いお婆ちゃんが現れ何か言っている。皮膚が弱く赤く腫れてしまったとかどうとか。24歳にして初めてお化粧をしたとか。
陽気で快活な話し振りについ引き込まれてしまう。一家で歌を歌いながら全国を回ったとか、食事代が高すぎて食べる事が出来ずレストランを出たとか、辛かったであろう話を楽しそうに話すのである。母親の名前がマリア、当の本人は次女のマリアさん
ん? これってサウンド・オブ・ミュージックのモデルとなった一家では? こういった時の勘って怖ろしく鋭いものである。
きっとそうだろうとの思い込みで話を聞きながらそのことへの関連付けに頭がフル回転しているのである。
はたして…、やはりそうであった。オーストリアから逃げるように出国しアメリカに亡命したトラップ伯爵一家の次女、マリア・フォン・トラップさんへのインタビューであった。
ドイツ映画の【菩提樹】やロバート・ワイズの映画【The Sound of Music.】で一躍有名になった、トラップ一家である。
急に有名になったもののそのおかげで巨万の富を得た訳ではない。自分達の本当の姿と乖離した虚像が独り歩きしてしまい、それに対するジレンマもあったことだろう。ナチの手から逃れることは出来たがアメリカでの生活は大変なものだったらしい。それでも家族全員が寄り添い、どんな事でも懸命に協力し合って生きてきたのだ。長男と次男の二人を徴兵され老いた父親と女達だけで家を手作りしたという。元伯爵令嬢であった筈のマリアさんはそれを楽しそうに話すのである。母親といってもそんなに歳の離れていない義母のマリアさんの影響も大きかったようだ。マリア母さんがリーダー役で皆を引っ張り、いつも明るく振舞っていたのが皆に影響を与えたのだろう。
そのマリア母さんが書いた自叙伝が廉く買い取られ【菩提樹】に、そこからまた興行権を買ったアメリカの映画会社が【The Sound of Music.】を製作する事になったのである。
それでもマリア母さんは「儲け損なった。」なぞとは一切思わなかった事だろう。一度は修道女として神に仕えていた身である。
トラップ一家の子供達の母親となってからは、子供達を育て上げる事を神へのご奉公と考えていたのだろう。
無神論者の私には信仰を持つ人の人間としての強さ美しさが羨ましい。
TVを見ているうちに、次女マリアさんが話す母親像と【The Sound of Music.】でマリアを演じていたジュリー・アンドリュースがダブってしまった。あの雄大なアルプスの景観とジュリー・アンドリュースの透き通った歌声。あれから40年以上経っているのか。
毎度お馴染みのYOU TUBEをリンクしておきます。
あれは私がまだ中学3年生の頃だったように思う。新聞の広告や、観た人の話に聞き耳をたてながらも、観る事は出来なかった。高校へ進学するかどうかでお金が無かったのです。家もトラップ一家同様赤貧に窮していたのです。
高校入学後もクラスの中で時々この映画が話題になる事があった。中学の頃に比べ、この高校の方が文化レベルの高い人が多いようだった。殆どが中流以上の家庭でそれなりに子供達にもお金をかけているようだった。それでも中には私同様赤貧に喘ぐ家庭の子供もいた。当時はそんな事で差別しようなんて発想は誰からも出てこなかったが、今ならどうなんでしょうね。私なぞ真っ先にいじめの対象になっていたかもしれない。
大分後になりTVで観た時の感動は言葉では言い表せない。当時の映画は素晴らしいものばかりだった。
威圧的な岩山となだらかな草原。この対照的な景色もこの映画の魅力のひとつです。当時まだ山の魅力に染まっていなかった私ですが、この映画の影響があったのかもしれない。
懐かしさに浸りながらついTVにのめりこみ夜更かししてしまった。これじゃあ睡眠導入剤にならないじゃないか。NHKさん、もっとどうでも良い番組を放送してくれよ。でないと慢性の睡眠不足になってしまうぜ。