衆愚政治

最後の独裁者像撤去=スペイン
こんな見出しでNetのニューズ。まるで悪の権化だったような言い回しである。
言うまでもなくフランコ将軍の事である。暗殺、報復が日常化した混乱の最中、クーデターにより政権を掌握。その内乱時には他国も国を挙げての介入が出来ず、人民戦線の名の下あるいは反ファシズムの名の下、多くの外国人が義勇軍として反フランコ側に参戦した。ヘミングウェイもそのひとりで、その時の経験を元に書いたのが【誰がために鐘は鳴る】である。この小説でもフランコ将軍は悪人なのである。余談ですが映画化された作品に出演していたのがイングリッド・バーグマン。ショートヘアーの可愛いお姉ちゃんだった。
政権掌握後は世界中が第二次世界大戦に突入していく中、巧みな外交で連合国側にも枢軸国側にもつかず中立を守り他国の戦火をよそにスペインに平穏な日々をもたらしたのである。
枢軸国側が破れた後、世界中からファシズムは無くなったかのように誤解していた人も多いと思うが、スペインはフランコ体制を維持し続け、その後30年に亘り唯一のファシズム国家として永らえていたのである。
そのフランコ将軍も年には勝てず後継者を指名して身を引く事になる。
人は風見鶏だとか日和見主義だとか言うが、内乱の悲惨さを知っていたからこそ戦渦を避け続けそれがスペインに平穏をもたらし続けたのだと思う。戦後もファシズムを目の仇にしていたアイゼンハワーと逸早く関係改善に努めている。


独裁という形態は全ての政治判断が一部の人達に委ねられ政策が偏ってしまう恐れがある。世の中に聖人君主は少なく、いたとしても年と共にその公平性も失われるものである。そんな懸念からより多くの人々の公平な判断により政策を決定しようと言うのが民主主義である。
しかし現にフランコ将軍の統治下、スペインは半世紀に亘り平和な時代を謳歌している。立派な人物に政治を委ねる事ができるのであれば民主主義よりも大所高所からの判断に基づいた政治ができるのである。
そして民主主義の欠陥、その最も大きいのが衆愚政治に陥り易いという点。
今の日本、これって衆愚政治そのものじゃありませんかねえ。