お嬢様のお手て

前日深夜からの嵐。今朝は落ち着いたかに見えたが、雨足がまた激しくなった。風の方はもう治まっている。
以前なら春先の大雨は「雪が減る〜。」と嘆いたものだが、近頃では殆どスキーに行く事もなく全く気にならない。
しかし昨日の天気からこんなに崩れるとは想像すらしなかった。
大雨の中、朝の内に床屋へ行き、その帰りに一週間分の読書(喫茶店で漫画の読み溜め)をする。
行きつけの喫茶店ではバイトのお姉さんが数ヶ月前から新しい子に交替していた。
お勘定の時に手が触れるが、それがとても柔らかいのである。耳たぶより柔らかめでなにか湿り気があるようにしっとりとしている。
良家のお嬢様のお手てってこんなものなのか。
家の子供達が幼かった頃でもこんなに柔らかくはなかった。2人とも男だからかな?
娘を持った事のないオヤジとしては、こんな事が大きな驚きなのである。
家のかみさんも高校生の頃から知っているが、こんな驚きはなかった。
そう、かみさんはその頃既に家事を受け持つ主婦の手だったのだ。それに加えて、岩を掴んだりザイルを扱ったりで細かな傷の絶える事もなかった。
若い女性にとって、手に限らず身体の全てを美しく保つ事は重大関心事であろう。
かみさんも少しはそんな気持ちもあった事だろう。しかし自身の置かれた環境がそれを許さなければそれに従うしかない。
若い頃から手のケアなぞ一切していない。ザラザラカサカサの手でも子供達にとっては懐かしく、触れられるだけで心が落ち着く手なのである。
かみさんの手の事なぞ今まで考えた事もなかったが、そのザラザラカサカサが我々の生活を支えていたのだ。
本人は一度も口にしたことは無いが、人より早く【お嬢様のお手て】と決別した事に残念さもあった事だろう。
そして今も職場で油の付いた金属材料を触る事もあるようで、爪先が真っ黒の事もある。


毎週日曜日のお昼くらいご馳走しても罰は当らないか。今日も味噌煮込みが食べたいと言っている。
それじゃあぼちぼち出かけますか。