里の雪

今朝目覚めると外が真っ白。
庭も屋根も周りのもの全てが真っ白。真っ青の空に陽に輝く雪の白さが映え、眩しさに眼を射られる。
なんとなくうきうきしてくる。せいぜい1cmか2cm程度の薄化粧で、雪で遊ぶなんて事は出来ない。にも拘わらず、気持ちが落ち着かないのである。なにかに急き立てられているような気持ちなのである。
昨日あんなにたっぷりと雪と戯れてきたにも拘わらず、この気持ちは何故なんだろう。


山の雪と里の雪は別物である。
山に雪はあってあたりまえ。里に雪は無いのがあたりまえ。あたりまえじゃあないから珍しく、エキサイトするのである。それはそれで当っていると思うが、それだけとは思えない。
里の雪は…遥か昔の幼少期を想い起こさせる。想い出すだけで重苦しい気持ちになる。里の雪はそんな幼少期の中であじわった数少ない清涼飲料水のようなものである。苦痛の中での数少ない歓びだったのである。


既に芝生の上は融けてしまった。日陰の雪も昼過ぎには消えてしまうのだろう。一瞬蘇った幼少期の記憶と共に。