降りてゆく生き方

チョボラでお世話になっているTさんからかみさんが頼まれたらしく、前売り券を用意してあるからと映画を見に行くように言われました。
「面倒臭せえなあ。」
「Tさんにお世話になってるんだから受けるのが当然でしょ。」
いつものように言葉ではかみさんに敵いません。しぶしぶ承諾しました。まあ土曜日が潰れても日曜日にメタボ治療に出かければ良いか。
私一人では不足とみえて子供達二人も一緒に行くようにさせられていました。凄い折衝能力です。
かみさんから渡されたパンフレットを見ると、タイトルが「降りてゆく生き方」私の人生は「堕ちてゆく人生」なんだ私にピッタリじゃありませんか。
主演が武田鉄矢。あのしたり顔でくどくど喋る説教臭さがどうも生理的に受け付けず、尚の事気が進みません。
Netで下調べすると、「ストーリーはお教えしません。」とあります。また「奇跡のりんご」で有名な東北のりんご農家の何某さんが出ていたりして、どうやらサスティナビリティを主題にした内容のように思えます。
おまけに劇場上映はしない、宣伝もしない、上映希望者を募って一回限りの上映を地方の施設で繰返している、という少し変わった遣り方をとっているそうです。
前置きを見ると、戦後の右肩上がりの世の中、誰もが上昇志向で生きてきましたが、結局それで幸せになれたのか? と言う事へのアンチテーゼのようでもあります。


そして本日子供達と一緒に観てきました。
町民会館入り口にはTさんはじめ顔見知りの方々もおられ受付をされています。上映開始前には今回の上映を企画された方々が挨拶、上映に到った経緯などを話されます。Tさん達が活動されているNPOもその企画に加わっていたようです。
周りはジジババばかり。若い人は全く見かけません。子供達は場違いな所へ来てしまったようで居心地が悪そうです。
上映前からすぐ後ろの熟年オバハングループがけたたましいです。黙って観ろよ。自宅でTVを観ている訳じゃないでしょ。と言いたいのを押し殺してじっと我慢。まあこの年頃のオバハンはこんなもんかなあ。


映画自体は、私はそこそこ楽しめました。子供達二人はあまりお気に召さなかったようです。映画のストーリーのようなコンプライアンス欠如、モラール欠如は論外ですが、若者にとって上昇志向はあたりまえの事、それから外れる事も選択肢としてあっても良いが子供達がそれを選択することはなさそうです。
少し気になったのは、上昇志向=サスティナブルではない とでも言っているような面があった事。そして 上昇志向=金儲け とでも言いたげなところ。なにも上昇志向はサスティナブルでない訳でも、金儲けと同じ訳でもありません。劇中であった玄米で作る酒というのも大きなイノベーションでありその元にあるのは上昇志向です。
お金よりももっと他の事に価値観を持つ人は必要以上にお金儲けに走らなくても良いですが、それでも最低限の生活の為にはそれなりのお金は必要です。お金=汚らわしいもの という感情を植え付けるのもあまり良い事ではありません。
そして諸悪の根源のようにファンドを貶めていますが、そのファンドの出資者は殆どが個人投資家、我々一般庶民なのです。身に覚えがなくても預金をしていればその金融機関の融資先が色々なファンドに占められている事を認識してください。少しでも利回りを良くし出資者の利益を増やそうとの努力が時としてモラールから外れる事があるってところでしょう。ファンドばかりを悪者にするっていうのは全体に目が届かない人のストーリー作りの為せる業ですね。ファンドが悪いのなら預金も止めればいかがでしょうか。


武田鉄矢は虫が好かない。この先入観は相変わらずですが、映画の中の川本五十六、共感が持てます。それを演じた武田鉄矢、なかなか大したもんじゃありませんか。
文字にして気が付きましたが、これって山本五十六を捩ってんですかねえ。