ワタミの介護に見るシェアードバリュー

不謹慎かもしれませんが、「誰の手も借りず自分で自分の事をごく普通にやりながら老後を生き、ある日突然コロッと逝く。」というのが老後を生きる者の理想ではないでしょうか。
私自身もそうなるべく、普段から【粗食に耐え、余分なカロリーを消費させ、心配機能の維持に努め、且つボケ防止の為】に御在所Hikingを続けています。
人間って生きている限り使う機能は維持されます。いや、やり方によっては衰えていたものを修復させる事も可能です。いたずらに年だからといって楽しすぎると返ってその機能は衰えてしまいます。
年寄りだからと甘やかす事が本人にとって良くない結果に繋がります。そうなると本人だけでなく周りの家族にも負担をかける事になります。
我家のように介護にお金をかけることの出来ない貧困家庭には切実な問題であり、人様以上にケアしなければなりません。


外食産業のワタミが介護事業に参入して今年で7年目だそうです。
その間、民間企業として成果を上げてきた企業らしくそれなりの成果を上げています。
私自身外食にワタミへ行った事はまだありません(如何に経済的余裕がないかお解かりでしょう。)が、その活躍ぶりはいろいろなメディアを通して聞き及んでいます。ついこの前も創業者の渡邉美樹氏が都知事選に立候補されていました。民間企業という小船を淘汰の激しい荒海の中で巧みに操り今のワタミに育て上げた方ですから、閉塞したお役所仕事を建て直すには最も適した方であろうと思っていました。残念ながら石原さんの再選に終わってしまいましたが。国政を変えるにはまず地方から。地元名古屋をはじめつい先日までの宮崎、大阪など今までの常識という枠から外れた首長が活躍されています。ここに東京都が加われば一気にこの流れが加速し、国政にも影響が与えられると期待したのは夢に終わってしまいました。
話をワタミの介護事業に戻しまして、昨日のNetニューズでこれに関して渡邉美樹氏へのインタビューを見ました。
その中から「なるほど。」と思った事を少しお話ししたいと思います。
介護事業は本業の外食産業と理念が同じだったと言う事。お客様からの「ありがとうを集める」と表現されていましたが、この意味は結構根が深いものと思われます。表面的に媚びるのではなく、顧客から心底良かったと思われる事。まさにこれではないかと思います。
介護といってもただお役所仕事のようにマニュアル通りにやるだけではこれほどの発展はなかったでしょう。
その大きな取組みとは自立支援への取組みです。冒頭にも述べましたが、「やり方によっては衰えていたものを修復させる事も可能です。」と言う事に取り組んでいるという事です。これによって寝たきりだった人が起き上がれるようになり、つかまり立ちできるようになり、そして自立歩行できるようになる。本人にとっても幸せな事であり、介護する側(施設従業員も家族も)にとっても負担が減りありがたい事です。
本業が【食】のプロであることからワタミの介護施設の料理は他とは比べものにならないくらい美味しいと評判です。人間最後の最後まで持ち続ける欲は性欲でもなければ名誉欲でもありません。食欲だけです。流動食だけに頼っていた寝たきりの入居者が「美味しい食事が摂りたい。」の一心で、今では自分で階下の食堂まで歩いて行き周りの人達と歓談しながら食事を摂れる様になったという事例もあるそうです。
これこそが過去の常識にとらわれない新規参入した民間企業の強みではないでしょうか。
余談ですが元々が外食産業、食材も自前の農園を持っていますのでこの面でのシナジーも収益に貢献しているそうです。
こうやって民間企業の強みを生かし、今までの官からの補助の上で胡坐をかいていた業者よりローコスト、ハイクォリティーのサービスを提供する。そうやって事業者間で自由競争が出来るようになればイノベーションに拍車がかかりなお一層ローコスト、ハイクォリティー化が進む。
暫く前に「もしドラ」 - tanuoの日記で紹介した マイケル・ユージン・ポーター教授の言う【シェアード・バリュー】はまさにこの事ですね。
コストセンターと思われがちな介護事業をプロフィットセンター化すれば社会の負担も軽減されます。それをもっと実りのあるものに振り向ければ世の中もっと住み易く皆が幸せに暮らせるようになります。