ご利益(ごりやく)

「工業排水からレアメタル」今日の朝刊にこんな記事がありました。
暫く前には諏訪湖近辺の汚泥から金が採れ、それも充分採算ベースに乗る量だとか。
廃棄された電子回路基板などから金やパラジウムなどの貴金属が効率よく回収でき、既に商業ベースに乗っている事も以前から伝えられています。
現在世界中でレアメタルの争奪戦が繰り広げられています。軍事力を背景になかば脅迫じみた事をしている国もあります。どこの国とは言いませんが皆さんお解かりかと思います。
そんな中でお人好しの日本人は、いつもがめつい国々の後塵を拝してばかりですが、こういった方法で何度も無駄なく利用出来るのはとても良い事と思います。いや国家の存亡にも係わるほど重要な事です。
貴金属、レアメタルに限らず、そのまま垂れ流せば公害、回収できればとてつもなく高価な資源となるものは回収しない手はありません。随分前には化学肥料の元となるリン鉱石の輸出を産出国が軒並み停止し始めている事も聞いています。これなどその最たるもので、排水が赤潮の原因となり数多の海産物に被害を与えています。回収し、海でなく畑に撒けば農産物の収穫に貢献してくれます。
日本のような資源の無い国は世界に率先してこういった技術を牽引していかなければなりません。


最近S司が学校で言われたらしい。「その研究が一体何の役に立つんだ?」「君の研究には生産性が見出せない。」
随分辛辣な事を言われているようです。昔と違い、独立採算化の荒波に洗われている学校とその先生達は、より民間企業への貢献を強いられているようです。でもねえ、一見何の役にも立ちそうにない基礎研究も学校の重要な役割ではありませんかねえ。
今、中日夕刊の「この道」を小柴さんが担当されています。スーパーカミオカンデで有名なあのノーベル賞受賞者の小柴さんです。あの研究や実証試験こそ直接的な民間企業への貢献なぞ無いのじゃないですかねえ。それでもノーベル賞が受賞できるほど重要な事なのです。
にわか仕立ての効率化や生産性を云々して、少々浮き足立っているように感じます。先生方ももっとご自分に自信をもって頂きたいですね。直接民需に役立つものもあれば数十年先にやっと役立つものもあります。今すぐ役立つものだけというのはやはりおかしい。いろんなものを含めて学究の目的とするからこそ学校なのではないでしょうか。
その小柴さんの「この道」、今日はフォトマルと題されていました。光電子増倍管:フォトマルチファイヤーを略したものです。私も昔、M大からの受注で乗鞍の宇宙線研究所に設置する機械に携わった事もあり、フォトマルと略して呼んでいました。懐かしい響きですねえ。
浜松ホロニクスの畫馬さんとのエピソードもよく耳にする話です。結局小柴さんからは大損したかもしれませんが、今ではフォトマルに関しては世界のトップメーカー、独占企業です。結果的にはしっかり儲けており、この点では小柴さんもしっかり民間企業に貢献したと言えます。


今直接的なご利益があるかどうかより、今後どれほど重要性が増してくるかを念頭に弛まず努力を続ける事が重要かと思います。