【いじめ】の構図と二値論理

今日の中日新聞朝刊で目にした記事。
大量の産業廃棄物の中にこれまた大量の賞味期限切れ前の食品が含まれているそうである。
賞味期限という単なる目安に過剰に反応する消費者、小売業者、卸売業者によって、期限までまだ数ヶ月あってもメーカーは廃棄せざるを得ないそうである。
無駄に対する問題提起とともに赤福が引き合いに出されていた。【むきあん】などの、物を大切に扱う手法にもふれていた。昔から和菓子屋さんでは常識として行っている手法である。百年以上に亘り受け継がれている手法であり、安全面や風味落ちなぞ無い事は歴史が証明している。近頃では固形のカレールーでさえ「一晩寝かせた云々。」と時間をおいた方が風味が高まる事を強調しているものもある。
赤福の営業再開がニューズとなったのはつい先日の事であり、ほとぼりが冷めてからの記事である事が心に引っ掛かる。
たとえ擁護の立場をとらなくても、何故あの時期にこういった公平な情報を流さなかったのだろう。
思い当たるのは以下の点である。

1 複数者が一者を攻撃している時、その一者を擁護すれば自分もその攻撃の対象とされる。
  (これって学校での【いじめ】の構図と同じですね。新聞社も子供と同じ精神年齢のようです。)

2 新聞社自身の理念が狂っている。「公正な情報を広く発信する事で公易に供する。」のでは無く、発行部数を伸ばす事のみが目的となっている。その為には面白可笑しい記事が要求される。新聞社の公器としての尊厳など地に落ちても、大多数の心の卑しい購読者に迎合できれば良いと思っているようだ。まるでペーパーバックライターである。

以前にも述べたが、NHKは流石である。あの時点での番組【視点・論点】で、赤福や地鶏問題について、主体性のかけらも無い民放や新聞社とは全く違った視点で、且つ公正な視点で論評していた。

そして中日新聞一面には中国製輸入餃子の添加農薬による中毒事件。JTは煙草でも国民の健康を損ね、食品でも損ねたいらしい。ここにも加熱し過ぎた結果の中国ビジネスの問題点が浮かび上がっている。作った中国側も問題だが成分分析もせず素通りさせているJT側の問題の方が大きい。
色々と問題含みではあるが今更中国との関係を絶つなんて事はナンセンスである。たとえ問題があろうがひとつひとつ解決しながらパートナーシップを育てて行くべきである。
無知であると同時に意識自体も低いのが中国の現状である。今大量に日本に流れ込んでいる中国産の農産物、水産物は皆日本の商社が育て上げたものである。それらの猿真似で新規参入したJTの懐の甘さが露呈しただけの事である。
本当かどうか知りませんが、中国の人達は自分達の作ったものは口にしないそうです。では何を食べているか? 東南アジアからの輸入品だそうです。「作った本人が身体に良くない事を一番良く知っている。」との例え話のようですが…。
それくらい低コストの裏に大きなリスクを含んでいる。って事なのだが、先駆的商社マン達のセオリーに従って、食の安全性 生産方法 管理方法など一から教育すれば良いのである。安全性に価値がある、安全性がお金に繋がると解れば起業家精神の旺盛な国民柄、きっと安価で良質そして安全な物を供給してくれる筈である。
へそ曲がりの私は、他の人達のように【中国製食品の排斥】へと短絡することはない。こんな考え方しか出来ないものだから異端児と思われてしまうのかもしれない。

それよりもうひとつ気になる事がある。
今回の餃子事件も赤福も紙面を見る限り同じ重みなのである。かたや実害なぞ全く出ていない。かたや中毒という実害が起こっている。そして中国製のみが強調され販売元のJTをまるで被害者のように扱っている。製造元の中国もとんでもない事だが、それ以上に販売元の方も非難されるべきである。【知らなかった】こと自体が重度の犯罪なのである。
善悪の基準がずれている事もさることながら、どうやら報道関係者の頭の中は善と悪の二値論理で成り立っているようである。同じ悪の中にも重みが1の悪、重みが100の悪と多様な悪がある事が解らないらしい。
こんな紙面の割き方を見る読者は赤福も中国製餃子も同じ重みの犯罪と思い込んでしまうわなあ。
これも小中学校時代から○×問題の試験を勝ち抜いてきた結果なのだろうか。はやりのデジタル人間の頭の中はこんな論理が正常なのだろうか。
時代遅れのアナログ人間であるtanuoさんには理解し難い論理なのである。

話のついでに再生紙の話も少し。
官製はがきを含め再生紙の古紙含有比率が偽装されていたそうである。
大々的に製紙メーカー各社が槍玉に挙げられているが、私の見方としては赤福と同レベルの犯罪である。いや赤福共々犯罪という程のものか?
「古紙を多く使えば経済的で環境負荷も減る。」なぞと言うのは無知な人達の思い込みである。その中にお役人様が多く含まれていた。と言うのが騒ぎの元となっているだけである。各製紙メーカーはたとえコストが上がろうとも品質向上と環境負荷軽減の為に苦肉の策を選択していただけの事である。頭の固いお役人様への説明に二の足を踏んでしまい、説明もなく今日に至ってしまった。というのが現実のようだ。謂わば赤福と同じアカウンタビリティーの不足である。
「良いものを廉く、環境にも優しく製品を供給していたのに、なんで今更槍玉に挙げられるのか解らん。」と言うのが、各製紙メーカーの思いだろう。でも赤福でさえあれほど痛い目にあっているのである。製紙メーカーさんも痛い目にあって下さい。
それほどまでに今の世の中、アカウンタビリティーの重要性が高まっているのである。


つい引き込まれ記事を読んでいたらトイレの時間が無くなってしまった。朝の1-2分はそれほどまでに貴重なのである。
しゃーねーな。会社まで我慢しようっと。


そして帰宅後。
夕刊を見ると中国製餃子の話で持ちきり。「わ〜、えらい騒ぎになってる〜。」
まるで蜘蛛の子を散らしたような状態。どうやら同様の加工食品を中国の一社だけから複数の日本企業が仕入れていたらしい。その量3,800トン。それで我も我もと自主回収。コストメリットだけを享受しようと安易に既存メーカーに頼ったのが問題。それもよく調べもしないで。一度でも査察した事があるのだろうか。HACCPやISOの認証を受けている企業ばかりである。そんなもの認証を受けていても全く形骸化しているとしか言いようがない。地道に一から現地企業を教育した商社とは比べものにならない。安直な方法を採れば必ずしっぺ返しが待っている。
そして今回の中毒騒ぎが発生する前に既に前兆はあったそうだ。顧客のクレームを黙殺し続けた結果がこの騒ぎ。
知らん顔してるか過剰反応か、二者択一しか出来んのかい。やはりこの業界の人達も二値論理のデジタル人間のようだ。