④前尾根の不思議 その2


【そこ】がどの辺りだったか思い出せない。
感じとしてはP-4の手前くらいか。
というのも、昔はフル1ピッチもあるような所はなかったような気がする。ところが今はP-4への登りは35mほどある。50mザイルでは余裕充分だが40mザイルではほぼいっぱいってところだろう。それも真下からでなく少し登った所のボルトが打ってあるバンドからである。真下からだと50mザイルでもきついくらいで、途中でピッチを切る事になる。尤もここのピッチそのものがⅡ級+程度なのでコンテで行っても問題無いが。
それで昔は【そこ】を通り、今のP-4への登りの途中に出ていたのではないか? と推測している。
この、【そこ】と言うのが、今は無くなってしまったのか見つけられずにいるのか、判然としない場所なのである。
尾根を直上してくると右手北谷側がスパッと切れ落ち、そこから緩斜面のスラブが左上していた。横に広く縦は5m程度と短く、薄い板を貼り合わせたような粗く大きなスタンスがそこらじゅうにある為全然難しくは無いが、万一落ちたら北谷まで数百mの空中遊泳である。わざわざこんな所でスタカットに切り替える人もおらず普通はコンテのままである。だからいつも緊張したし記憶にもよく残っている。
この幅広スラブが見つけられないのである。
あんなに大きな岩盤がどうすれば姿を消すのであろうか。
前述の【滑り台】と言い、この【幅広スラブ】と言い、不思議でならない。


それとも、・・・これもまた私の記憶が勝手に作り上げたものなのだろうか。