オーケストラのコンダクター

PCでMSアクセラの試乗インプレッションを見ていたらかみさんがやってきた。
解説が不審な話し声に聞こえたらしい。
画面を見るなり、「S司にそんなもん買ってやっちゃ駄目だよ。」
S司がずっと以前にアクセラが欲しいと言ってたのを覚えていたらしい。
「買う訳ねえだろ、お金も無いのに。見てるだけ〜。」
迎えの車の中でも言っていたが、最近S司の一言二言が気に要らないらしい。
「最近だんだん生意気になってきた。」
「生意気な口が利けるくらい成長したって事じゃないか。頼もしい事じゃないか。」
「どこが頼もしいの、何にも出来もしないのに口ばかり生意気になって。」
口答えする訳ではないが、チクッと皮肉を混ぜるようになったのがお気に召さないらしい。と言うのも家の中で一番威張っているのはかみさんである。私も含め他の男共はかみさんのように口が立たない。口論するのも面倒臭い。それでいつもかみさんの言いなりなのである。そこにチクッと皮肉を挟むものだから、それが気に要らないらしい。
近頃どこのお宅も似たり寄ったりで昔風の亭主関白なぞは姿を消して久しい。これが今風なのかどうか解からないが、家庭円満の秘訣であることに違いは無いらしい。それに大した事でもないのに目くじら立てるのも大人気ない。大事な事のみに筋を通しておけば良いのである。S司もそれが出来ないという事は、まだまだ修行が足りんのう。いずれ彼女が出来れば厭が応でも私のように飼いならされてしまう事だろう。T哉なぞもうしっかり手懐けられてしまったようだ。女とは大したものである。いつまで経っても子供のままの男共にはとても真似のできる事ではない。


買えないと言ったものの、カルちゃんもぼちぼち寿命である。T哉のエイトが来年1月まで家に置きっぱなしなので買い換えるにも車庫証明が取れない。必然的に11月の車検は受ける事になるが、いずれは買い換える事になる。再来年の下準備では鬼どころかなにもかもに笑われてしまうが、検討するくらい良いではないか。
候補としてはMSアクセラロードスターRHT、スイフト4WD、ニューインプレッサコペンといったところである。
実用性で選ぶならスイフトかインプ(いずれも4駆)だが、やはり遊び心のファクターは大きい。MSアクセラロードスターは魅力的である。
これら候補の中に日本車の代表格であるT車やN車は入ってこない。何故かと考えてみたら、顔が見えないのである。昔T車ばかり乗っていた頃はちゃんと顔が見えていた。見えていたくらいだから顔はあったのである。ところが今のT、Nには顔が無いのである。
個々の技術や仕様にはそれぞれ目を見張るものもあるが、車全体として見ると顔が見えてこないのである。
個々のオーケストラ構成要員は卓越した演奏者なのに、コンダクターなしで演奏しているようなものである。てんでバラバラに演奏していて全く統一性が無い、主張する物が無い、結局顔が見えないのである。
日本の製造業の強みであるTQCに代表されるように、日本の文化はボトムアップ型である。当然積上げられたものにはトップの顔はない。トップダウン型の欧米型文化のようにトップの顔が鮮明に見える事はない。T社の強みであるボトムアップ文化にトップの顔を期待する事自体が無理な話かもしれない。じゃあ昔のあの個性は一体何だったんだろう。昔はまだアソビの要素が許されていたのかもしれない。今では何もかもがんじがらめだからなあ。
そんな日本文化の中にあって、マツダ、スズキ、富士重は異質である。車それぞれにコンセプトがはっきりしている。はっきりとした顔が見えるのである。日本的感覚で言えば「なんでこんな無駄な事をするのか?」となるところも、本来のコンセプトに従ったらこうなるのである。無駄だと決め付け削って行くとコンセプトも何も無い、顔の無いT車になってしまうのである。
マツダさん、スズキさん、富士重工さんにはそれぞれの主張を押し通して今の路線を堅持して貰いたいものです。指揮者のいないオーケストラなんて聴きに行けないですもんね。