今日の夕刊から

"ヒトラー発注「最強の車」 13億円? 競売へ"
アウトウニオンDタイプ が写真入りで載っていた。シルバーアローと呼ばれているシリーズの最強版である。
ある雑誌の'05年Vol.4(季刊誌なのでラストクウォーター版)に詳細記事が載っていたものである。新聞では当時のもののように書かれていたが、実はレプリカである。このグラマラスな曲線美は新聞の写真からでも容易に伺い知る事ができる。そしてこの芸術品は昔ながらのノコギリとトンカチで手作業により再現されたのである。
ノーズに輝くフォーシルバーリングス、このロゴが何を意味しているのかも推察できると思います。
アウグスト・ホルヒ博士が興したホルヒ、ホルヒを追われたホルヒ博士が再度興したアウディアウディを傘下に収めたDKW、そしてヴァンダラーの4社が統合されて出来たのが、Auto Union AG(アウトウニオン)である。
戦後東独に殆どの工場を接収され、西独に残ったDKWがAuto Unionを継承するが、ベンツの子会社になったりワーゲンの子会社になったり。ワーゲンの下で、ロータリーの生みの親であるNSUと統合し、Audi NSU Auto Union AGとなりその後Audi AGとなり現在に至っている。
フォルクス・ワーゲン(名前の通り国民車)しか作れなかったフォルクス・ワーゲンはAudiの技術により大型車も手がけるようになったのである。現在でもエンジン、変速機など最新技術はまずAudiに搭載されその後同グループのワーゲン車に搭載されて行くという流れになっている。


こんな芸術品を手作業で作り上げていた、ドイツ独特のマイスター制。現在主流の流れ作業方式が一般化するまではこのマイスター制が製造業の究極の姿だったのである。高度な技術と品質を保つにはこの方法が唯一の方法だった。対象的に流れ作業方式は、テーラーイズム、或いはフォーディズムなどとも呼ばれる。世界で初めて労働という物を科学した、フレデリック・ウィンスロー・テーラーや自動車王ヘンリー・フォードから採ったものである。テーラーの解析から作業を細かな工程に分け、その工程にだけ特化して教育すれば短期間でその工程の熟練工が養成できる。この手法により爆発的に生産性が上がりその恩恵に最も浴したのが20世紀初頭のアメリカである。
第二次大戦はテーラーイズムとマイスター制の戦いだったとも言える。そして勝利したのはテーラーイズムである。
ドラッカーの著述の中にこんなものもあった。
開戦時ヒトラーアメリカは絶対に参戦しないと考えていた。アメリカには光学技術が皆無だったのである。銃撃などには必ず照準器が必要だがアメリカがそれを大量に作れるようになるには30年はかかると思われていたのである。ところがテーラーイズムのおかげで数年で量産できるようになってしまった。これがヒトラーの犯した最大の誤算なのだそうだ。
そういえば戦前からドイツには優秀なレンズメーカー、カメラメーカーがあったなあ。カールツァイス、ライカetc. etc.


シルバーアローDタイプからとんだ事に話が飛んでしまった。