浦島太郎

技術部門を離れて20年近い。
現役の頃と今とでは技術の進歩に隔世の感がある。「へえ〜。」とか「なるほど。」と思うのは日常茶飯事である。
そんな中、特に印象的だった事でも。


最近のPCに使われているHDはシリアルATAのインタフェースが多い。いずれこの規格がHDの標準となるのだろう。ついこの前までIDEが標準だったのに。
普通シリアルよりパラレルの方が転送レートは高い。1車線より8車線の方が8倍多くの車が走れる。
RS232C(古〜!)よりGPIB(これも死語に近い。)の方が転送レートが高かったように。
しかし転送速度が上がるに従いこの常識は通らなくなってしまったようだ。パラレルとするためには複数の線路が必要である。全く同一特性の線路が用意できるのなら問題ないが、速度(周波数)が上がるに従いほんの少しの違いも無視できなくなるのである。信号の通る線路は導線と被覆である絶縁体で出来ている。長さを揃えればLはほぼ同じに出来るがC(ストレイキャパシタンス)を揃えるのは至難の業である。結局複数車線のそれぞれが山あり谷あり障害物ありで同じ速度で車が走れないのである。その為ゴールに到着する時間が車線毎で違ってしまうのである。まるでレースをやっているようなもの。(実際線路毎の信号の遅れをレーシングと呼んでいる。)
レーシング防止の為、各線路のストレイキャパを見かけ上合わせるよう、補償用のコンデンサを付ける事もある。しかしこれにも限度がある。ケーブルを這わせる位置、シャーシとの距離でストレイキャパはダイナミックに変動するのである。そんな事にコストをかけるくらいならパラレル線路の数を充分上回る転送レートでシリアルに信号を送れば絶対に到着順位が変る事はないのである。一本のレールの上を多数の車両を連結した列車が高速で走っているようなものである。一本のレールを走るのでどんなに山や谷があろうが速度はどの車両も同じ。後ろの車両が前の車両を追い越す事は絶対に無い。
とまあ高速転送時のシリアルの優位性はこうやって説明がつくが、やはり昔の常識からすると目から鱗なのである。
今はギガビット転送の時代。CPUクロックだって数GHz。そのクロックも昔のような矩形波パルスではなくアナログ領域の正弦波に近いのである。
昔の電波法の電波の定義では3GHzまででそれ以上は定義されていなかったように記憶している。ところが現在ではSSのダイレクト拡散で数十GHzまで実用化されている。電波法改正されたのかなあ。
光通信コヒーレンス化の研究が進められている。電波利用の黎明期、放電等で発生させた全帯域を含む電波のON/OFFで通信をしていた。現在の光通信もこれに近い。(減衰を少なくする為に近い波長のLEDレーザを使いますが、基本的にはON/OFFです。キャリアの単一周波に信号を重畳させるようには未だ至っていません。)
そのうち「えっ、そんな事が出来るようになったの?」と驚きの連続になるのかも知れない。
全くもって浦島太郎の心境である。