アップルパイ

先日かみさんがアップルパイを焼いてくれました。
一口齧っただけで旨味が口いっぱいに広がります。懐かしい味です。
小学低学年、神戸に居た頃を思い出します。
祖母と姉と三人連れ立って有馬道の方にあるパン屋さんへよく行きました。今でこそ全国津々浦々パン専門店がありますが、その頃既にこういったお店が在ったというのはハイカラな神戸だったからでしょう。その証拠に、名古屋に引っ越した頃は全く見かけませんでしたから。
そのパン屋さんで、今で言う調理パンやフランスパンを買っていました。
表面がカチカチでとても歯が立ちそうにないフランスパンを、1cmほどの厚みにスライスして頂きます。
噛むとパラパラと硬い表面が剥げ落ちます。勿体ないのでそれも後から指先に唾を付けて拾って食べます。クラッカーのような食感がとても旨かった。内側のパン本体は目の粗い発泡状で食パンよりはやはり硬めですが、噛めば噛むほどパン独特の味が出てきてバターも何も着けなくても充分旨かったです。いや何も着けない方が旨いと思います。最近はあのようなフランスパンにとんと出会っていないですねえ。
パン屋と言っても洋菓子も作っており、特に私の目を引いたのはアップルパイ。円形で周りのパイ生地が土手のようになっており、内側に焼きリンゴ、それをゼリー状のリンゴジャム?が覆っているものです。
いつも食べてみたいと思いながらもそんな我儘を口に出せずにいました。ですからアップルパイと言うと最初に思い描くのはこの丸いタイプ。最近よく見る四角いパイ生地シートで作ったサンドイッチタイプではありません。
いつどこで食べたのか記憶がありませんが、生まれて初めて食べた時の衝撃はとてつもないものでした。
最近ケーキ屋さんでもよくサンドイッチタイプのものを売っていますが、それを買って食べる事は滅多にありません。いつも期待倒れになってしまうからです。最近のケーキ屋さんのアップルパイも特に不味いと言う訳では無いのですが、あの味とは全く異なるものです。酸味の足りないただ甘いだけのアップルパイってキレが無いというかパンチが足りないというか・・・。

その前日、かみさんとヤマギシへ買い出しに行った時、店頭に他種リンゴに混じって紅玉が売られていました。それでアップルパイを作ってくれたのです。
コウギョクとルビがふってありましたが、私にはベニダマの方が馴染み深いです。姉もアップルパイの為に高山の方で調達しているようですがやはりベニダマと呼んでいたような。
今ではマーケットでは全く見なくなりました。何かの伝手でも無い限り紅玉は入手出来ないようです。あまりにも酸味が強過ぎて生食には合いませんから生産者さんも余程でない限り出荷しないでしょうね。一般家庭でリンゴを調理に使うなんてあまりありませんし。
そんな中未だに小売りしてくれているヤマギシさんに感謝。