もう半世紀近く前になりますか、卒業が近付いた頃にクラスで場違いな本がブームになりました。
フロイト著作集だったか何だったか思い出せませんが、フロイトの精神分析を著した本でした。黄土色の帙に入った立派な装丁でお値段も結構高かったと思います。
当時はお金に余裕が無く専門書すら古本屋で探していたくらいですから、専門外の本を新刊で、なんて私にはとても無理。かと言って皆が読んでいるものを自分が読まないのはバスに乗り遅れているようで落ち着きません。
結局就職してから手に入れることとなりました。しかし何でこんな本が流行ったんでしょう。電子工学を専門とするクラスなのにねえ。
とは言え今まで知らなかった世界を覗き見るようでとても感動した事を覚えています。この頃はフロイトの提唱した精神分析という手法で神経症の治療が驚異的に進んだ時代でもありました。いや、既にこの頃はユングなどが現れ、古典の仲間入りをし始めていたのかな?
何れにせよこんな世界が世の中には有るんだという事を知らしめてくれた一冊でした。
北海道にベテルの家というのがあるそうです。統合失調症を抱えた人達が昆布の収穫や出荷で自立、社会復帰に向けて共同生活をしているそうです。
それに関連したYOUTUBEなども多く発信しておられます。その中のひとつに患者主体でお互いに自己分析しているものがありました。
個人情報が他人に漏れていると言う被害妄想は、実は自分自身が周りの人たちに自分の事を知って欲しいという欲求の現れだったと分析していました。
これを見た時に思い出したのが前述のフロイトの精神分析でした。
今医学会の主流の考え方では精神分析は神経症には効果があるが統合失調症には効果は認められていないそうです。不明ではありますが今後どう変わるかも不明です。カウンセラーが導き出す精神分析とは違い、ベテルの家では患者達が寄り集まってコミュニケーションを図りながら分析を進めていす。
このみんなでというのがお互いの連帯感を醸成しより大きな効果に繋がっているような気がします。