ピーター・オトゥール

が亡くなったそうです。最も好きな俳優のひとりでした。
やはり小学生か中学生の頃に観た「アラビアのロレンス」の印象が最も大きかったと思います。
ロレンス本人は小男だったようですがそれを演じたオトゥールさんは大柄な人。本人よりもオトゥール演じるロレンスの方がよりロレンスらしく感じてしまうのはその演技力の為せる業でしょうか。
当時強大な国家だったオスマントルコを封じ込めたい英国を筆頭とする欧州列強と、独立或いは自立したいオスマン帝国内の各部族の利害が一致し揺動戦を繰り広げる訳ですが、地元民の独立を信じてそれをまとめていたロレンスは祖国英国に利用されていただけと後で気付きます。その挫折や戦いの中での人間の弱さ哀しさなどを見事に演じていました。そんな幼い頃の記憶は今もって鮮明に残っています。下手な芝居を数多く見るより本当に良い作品をたった一度観る方がよほど良いと思います。そう言う事ができる珠玉の一品だったと思います。また映像が特に美しかったです。炎天下の砂漠で逃げ水現象のような蜃気楼の中からだんだん人影が近付いてくる場面など本当に素晴らしいものでした。
当時の中東では現在のような欧米諸国とイスラム原理主義の対立なんてものは一切ありませんでした。もともとイスラムは異教徒に対して寛大な社会でした。今のこじれた社会構造はオスマントルコの崩壊後成り行きで出来てしまったものです。対立より当時に立ち戻って相互理解を進めるべきとの考えを指し示してくれる映画でもあります。
当時子供だった私がもう63歳。オトゥールさんが81歳。亡くなっても不思議なお年ではありませんが、やはり寂しいものです。