検診日

今日は検診日。どうせまた待たされるだろうと出かける前にS司の部屋の本棚を物色。
文庫本に目を遣ると、背表紙に【自己組織化と進化の論理】なるものがあります。その下の著者名に【スチュアート・カウフマン】。
紛れもなく複雑系です。「あいつもこんなものを読むようになったか。」
小学生の頃、一時的にとは言え【なかよし学級】に入れられていた子がねえ。子供の成長に感慨一入、ホント人なんてどう変わるか解りません。一生あの子の面倒を見続ける事を覚悟していたのも今では笑い話。
取り出して裏を見ると¥1,600+税 の表示。文庫本にしてはえろう高いです。頁数にして600弱、頁割りしても他の文庫本よりかなり高めです。
診察の待ち時間を潰すにはチト重過ぎます。乱雑に押し込まれた文庫本はジャンル分けもなくゲーテやヘッセなどの古典文学も人文科学も中には専門分野のものまでごちゃ混ぜです。この辺りのチャランポランは私の遺伝でしょうか。
その中に【百億の星と千億の生命】なるもの。一見小説かと思いましたが著者名に【カール・セーガン】。「一時期日本でも【コスモス】が放映されていました。」と言えば皆さんお気付きでしょう。400頁ほどで税込み667円、やはり前者は格段にお高いです。
「じゃあこっち。」と内緒で持ち出します。(夕べからS司はお泊り保育です。)
まず放射線科でCTです。少量ですがまた被爆してしまいました。でも昔と比べ息を止めているのも一回きり。さすが螺旋スキャンは速いです。
次は該当診療科の受付で指示をもらい採尿と採血。
本を読みながら採血を待っていると甲高い子供の声。泣きじゃくりながら駄々を捏ねています。注射が大嫌いなtanuoさんも泣きたくなっちゃいます。しかしなあこの年であんな真似できっこないし。自分の年齢が恨めしくなります。ああ一度でいいから嫌だ嫌だと泣きじゃくってみたいです〜う。
順番が来ていよいよ採血。年若いイケメンが担当です。慇懃な物言いが神経に障ります。ブ男のtanuoさんはイケメンというだけで敵対心を抱いてしまいます。
腕を出しコブシを握っていると、そのイケメン君見えている静脈よりずっと手前から針を入れます。効率重視の為、例によっていつものぶっとい針です。「チクッとする。」と身構えていたのに全く感じません。その後はシリンダーの中でどす黒い血が噴水のように吹き出しています。
針を抜く時も予想に反して全くチクッとしません。まるで魔法にかけられたようです。
そして10時間後の今現在、絆創膏の中の5mm平方ほどの脱脂綿に血の滲んだ跡も見られません。違いは? 浮き出た血管より1cmほど離れた所から針を入れた事しか思い当たりません。これがプロの技なのでしょうか。今まで何度も血管に針を刺されてきましたがこんな体験は初めてです。
イケメン君への敵対心も消え、次回も是非彼に担当して貰いたいものだ。と思っています。
話しを戻し、その後の診察までの長〜い待ち時間、本のおかげで待ちくたびれる事もなく過ごせました。でも結局はお昼をかなり過ぎてから。
CT撮影の為朝から何も口にしていないので懐かしく空腹を感じます。年寄は時間が来れば義務で飯を食ってるからなあ。
動脈硬化があるよ。」K先生、心臓近くの大動脈に小さな白い点を見つけて喜んでいます。それでも年の割りに少なく「全然問題なし。」のお墨付き。
「先生、それより前立腺の方はどうなの?」
「あっ、これ石灰化。年だからね。」白い点を指して言います。
「うん大きいことは大きいけどまだまだ問題ないね。夜何回くらい起きる?」
「一回あるか無いか。」
「じゃあ全然大丈夫。」「そうだ、次回は尿流速を計ろう。イジワルしちゃおう。」
患者に年を感じさせて喜んでいます。この世界でかなりお偉い先生にしては茶目っ気たっぷりです。
かくして今回も異常なし。そうか、かれこれ30年近いお付き合いなんですねえ。