雨具

昨日の御在所の降りで懐かしいものを見ました。
若い人達が遅めの時刻に繰り出しそれと何度もすれ違ったのですが、その中にポンチョを着ている人がいました。
昔の雨具の定番です。主にハイカーが好んで着用していました。腋の下などの開口部が大きく通気性が良く蒸れ難いという雨具の代表格でした。私も歩くだけの山行ではよく使いましたが、この利便性は雨具として最高の物だと思います。
今の若い人達は形から入る。とよく言われていますが、高価なゴア製の雨具を買うより低価格で蒸れ難さがゴアの雨具以上のポンチョを使用されているのを見て、「ムムッ、おぬし出来るな!」と感心した次第です。
歩くだけなら最高のポンチョですが、岩登りの場合は登攀中いろんな姿勢を取るため開口部からもろに雨が入ったり岩角に引っ掛け易かったりなどの理由でポンチョは使わず今風の合羽を使用していました。但しゴアテックスなどの新素材が無かった為裏面ゴム引きのもので、これがまた凄く蒸れ易く外からの雨でなく自分のかいた汗でずぶ濡れになるのが普通という代物でした。だから多少の雨なら合羽は着用しないのが当時の常識でした。
登攀中はそうでもアプローチでずぶ濡れになるのは適いません。それで皆折畳傘を使っていました。街の生活で使っていたもののお古を使うのが普通で、山で見かける折畳傘は必ず一箇所くらいは骨が折れており、新品を山で見かけたことは有りません。
昔はよく見た山での傘差し、最近は滅多に見ません。経済的に余裕のある中高年の方々は判で押したようにゴアの合羽上下で身を固めています。その方が両手が使えて何かと便利かつ安全かもしれませんが。
昔から山で雨に降られた時は傘を使っている私ですが、片手で傘を持つって結構バランスが悪くなります。そんな事当然で仕方のない事と思っていましたが、何故なのかこの年になって初めて考えてみました。
通常手はどうしているか? と考えると両手を腰に掛けて歩いている事が多いです。ぶら下げたままだとぶらぶらして始末に悪いのですが腰に掛けていると安定しています。またよろめきそうになった時も肘が身体の芯より外側に飛び出している分モーメントアームが大きくなりそれでバランスが取り易いように思います。両腕を足と反対に振るのは街の歩き方です。体重移動しながらの歩行では手を振る必要はありません。最も負荷が軽くバランスの取りやすい両腕を腰に当てる歩き方が出来ないから片手に傘を持つ歩き方が不安定になるように感じます。
そして腰の位置ってのが何をするにしても次へのアクションが取り易いですね。
登りでは常に前屈みになっており腕を垂らすと指先は膝の位置まで来ます。膝の高さというと道の段差や横の石とほぼ同じ高さでバランスを取る為にそれらの石にすぐ手を付く事ができます。バランスを取った後は腕がぶらつかないように定位置の腰にあて次なるアクションに備える。
腰に手を当てて歩いている人って私だけではありません。たいていの人が同様に腰に手をあてています。
誰かに教わった訳でもないのに。人間工学的に皆さん自然にその形に収斂して行くようです。
それが傘差し歩きのバランスの悪さの原因だったようです。うん、なんとなく納得。