上海

昨日のお食事会での話。
丁度中華料理だったので、S司の上海行きが話題に上りました。
てっきり気象学会かと思っていたらそうではなかったそうです。なんでも国からの予算で中国の大気汚染の調査を進めているそうでそのお手伝いだとか。中国政府が大気等のサンプル一切の海外持ち出しを許可していないそうで、現地で調査分析しそのデータだけを持ち帰る事になるそうです。既に一部の人達は調査に行ってきたそうで、その人達の話では「食べられるものが無かった。」そうです。台湾、韓国、中国は食うものに困らないと思っていた私はそれを聞いてビックリ。でも貧乏学生の身ではまともなレストランでの食事なんて無理なのかもしれません。私も台北、香港などで一応屋台も経験していますが、見るからに不潔そうだし見栄えも悪いので神経質な人には慣れる事すら難しいでしょう。貧乏学生とはいえ皆さん育ちの良いお坊ちゃまばかり。屋台は無理でしょうねえ。
なにはともあれ現地の本格的な中華料理に慣れる為にもしっかり食べて慣れて下さい。日本国内の高級中華では現地の味とは乖離し過ぎているかもしれませんが。
海外での食べ物の話になり、昨年のカナダでも食べられる物が無かったと言います。たぶんアメリカに近かろうからこれは納得です。私もアメリカではよくマクドナルドで済ましていました。マックの味は全世界共通。欧州でもアジアでもほぼ同じ味です。ただアメリカの場合、屋台でも不潔感は無く素材が良いのか結構旨いです。下手なレストランよりずっとマシです。屋台のピザなんて日本では考えられないくらいの廉さでチーズもたっぷり。これに慣れてしまうと日本のピザなんて食えません。およそ1/10くらいのお値段ですから。


この中国での調査プロジェクトも仕分け対象となり、あわや中止? の憂き目に遭うところだったそうです。陳情でなんとか繋がったそうで良かった良かった。こういった研究を無駄としか見る事の出来ない人が多いのにも困ったものです。そしてもし【はやぶさ】のように世界の注目を集める成果が出るとあわてて予算を付けようとするんですね。とても主体性をお持ちのようには思えません。「今度の参院選でも絶対に入れてやらん。」…チョット脱線。


上海…家には65年前の彼の地の写真があります。私の父が青春時代を過ごした所。父にとって第二の故郷とでもいえる場所であろう事はよく解かっています。その写真の中にチャーミングな中国女性の写真があり、「青春してたんだなあ。」と推測していました。父とはずっと折り合いが悪かったのですが、嫌っていた割りに大きな影響を受けています。こうあって欲しいという勝手な願望を押し付けすぎていたのかもしれません。
職に就き数年後には分籍という形で絶縁してしまいましたが、その父も亡くなり20年近くなります。そして我家の仏壇は今、私が受け継いでいます。無神論者の私は盆が来ようがお彼岸になろうが全くの無頓着。
そんな私ですが以前深センへ行った時、父の身代わりとして数珠の珠を撒いて来た事があります。父が再訪したくても行けなかった上海と地続き、中国大陸の一部に違いはないのだからと。
そしてS司にその事を話すと、位牌を持って行き爺さんに今の上海を見せてきて上げる。と言います。仏壇が狭く繰り出し位牌にしてあるので、父の一枚だけ持ってゆけば嵩張らずにすみそうです。
二人の子供は私のように偏屈でなく本当に素直に育ってくれました。ただちょっと心配なのは、忘れ物の天才で位牌を上海に忘れてくるんじゃないかと…。
それならそれで良いか。父もその方が本望かもしれません。
憲兵−国内では官憲を傘に着た悪の権化のように言われていますが、彼の地ではそこに在住の日本国民を護る為の誇り高い任務に就いていた。と父は言っていました。当に死と隣り合わせの中での唯一心休まるところがあの写真の女性だったのかもしれません。
敗戦後は抑留生活の後、本土帰還。あの女性とは生き別れ。その後は公職追放の憂き目に遭い、お互い全く別の人と結ばれ再開する事も無くあの世に旅立ってしまいました。
霊なんて全く信じている訳ではありませんが、もしそんなものがあるとしたらそれは大いなるロマンですね。
そのロマンを信じ、父の位牌に上海の地を踏ませて上げましょう。