トップの資質

言い古された事ですが、実務能力が高いからといって管理能力が高いとは言えません。
仕事が良くできるからと管理職に昇進させたら、全く適性が無くその部署が機能不全に陥ってしまった。なんていう話を昔はよく耳にしたものです。最近ではそういった事を職群制度に反映させ、キャリアパスに不整合を生じさせないようになってきました。
旧来の職群制度でもさほど大きな弊害が出なかったのは、相対的に能力の高い人は管理能力も高い傾向が強かった為かと思われます。言い換えれば、器の大きな人は何をやっても上手くこなせるって事でしょう。
しかし世の中にはそうでない人も多く、悲劇を避ける為にもやはり適性を見て職種を選ぶ必要があります。
民間企業ではたとえ規模的に小さな企業でも、そういった事を念頭に置き人事考課を行っています。
それが政治の世界ではそんなことは全く考慮せずに行き当りばったりのようです。
この8ヶ月間の行政の機能不全の原因は当にここにあるような気がします。鳩山さんを党首に選ぶ以前から近くで接していた人には見えていた筈です。この人にはトップの資質なぞ全く無いという事が。
誠実である事、理想が高い事、実務能力が高い事、そんなものトップの資質とは全く無関係です。まして大衆に迎合して意見をころころ変えるなんてトップに立つ者のする事ではありません。
政権奪取の為に甘言を吐くのは洋の東西を問わずどこでもやっている事です。国民もそんな事は百も承知です。
政権を取った早い時点で、出来る事と出来ない事をはっきりと国民に伝えるべきでした。それこそ政権担当者の良心であり義務でもあります。所得の低い人達でさえ、子供手当や高速道路の無料化について懐疑的でした。それだけ鳩山さんより国民の方が現実的だったって事でしょう。
さんざん掻き回し、手の施しようがないほどグチャグチャにしておいてさっさと辞める(逃げる)なんて無責任どころか卑怯な人です。こんな人間失格者に政権を委ねた我々国民は救いようの無いおバカさんです。(私自身は票を入れた訳ではありませんが。)
そのグチャグチャの状態で菅さんがバトンタッチだそうです。なんとも不運な人ですねえ。同情してしまいます。
実は私、菅さんの隠れファンなのですが、菅さんが政権担当しても状況は変わらないと思います。誠実な人で実務能力も高いのでしょうが、鳩山さんほど酷く無いにしてもやはりトップの資質には欠けると思います。
客観的に見て、今の政界で最もその資質を備えているのは小沢さんしかいないのではないでしょうか。生理的に私は小沢さんが好きにはなれません。いや理由は無いのですが大嫌いです。それでもその気概、考えの一貫性、粘り強さ、統率力など他に比肩する者はいないでしょう。
政策はトップ自らが決める必要はありません。お飾りで良いのです。しかしそのお飾りの牽引力で政策が実行できるのです。鳩山さんのように国民新党社民党に愛想を振りまいていてはまともな政策など取れません。単独過半数に届かない事を手玉に取られ、無責任に好き勝手をするような党に政権担当与党の資格などありません。
福田さんが政権担当していた頃、ねじれ国会に手を焼き民主党との連立を打診していました。当時は民主一党で政権奪取を夢見ていた頃でその話をはねつけてしまいましたが、全く不可能な話ではありません。世の中の常識を持ち合わせていない社民党や官僚まるだしの国民新党と組むよりずっとまともです。元は民主党自民党から枝分かれしたのですから。