書物の森

今日の中日夕刊。「書物の森」なる書評欄に「自著を語る」と題しての記事。
「もし高校野球部の女子マネージャーがドラッカーの【マネジメント】を読んだら」と長ったらしい題の小説の作者がその経緯を語ったものです。
この小説はD社の刊行物と一緒に案内も送られてきておりその存在は知っていましたが、元来小説嫌いのこの私、買ってまで読みたいとは思わずにいました。
しかし中日新聞のような一般紙でこういったものが紹介される事は良い事だと思います。大体がD社の出版物というのは一般受けしないものが多く、その機会に巡り合わなかったが為に凄く大事な事を知らずに過ごしてしまう方々も多いのではないか。と思う次第です。
作者の紹介によると、最初はその女子マネージャーがドラッカーの著作を誤読してしまい、それを野球部にあてはめ偶然上手くいってしまったというコメディーにするつもりだったそうです。
それで女子マネージャーの視点に立ってドラッカーを再読したところ、誤読どころか無理なくすんなりと野球部のマネジメントにあてはまってしまったそうです。それで当初のコメディー風というのは取止め真面目な青春小説に路線変更したそうです。
読みながら「そうでしょ、そうでしょ。」と合鎚を打っている自分に気付いた次第です。
ドラッカーの著書全てに亘って言える事ですが、突拍子も無い事など全く言っていません。言われてみればごく当たり前のことばかりです。ただ殆どの人達が気付かず看過している事を顕在化させるところがドラッカーの偉大なところかと思います。それらは常に普遍性に貫かれておりどんなシチュエーションにでもピタリと当て嵌まります。作者氏も触れられていますが、なにも野球部だけに限った事ではありません。人が集まり皆で何かを進める時、それがどのような活動であってもマネジメントなしで遂行することは出来ません。それほどまでにドラッカーが指し示してくれる事は普遍性に則っているのです。
普段一般の方々の目に触れられる事のないドラッカーの著述が、これがきっかけとなって多くの人に読まれるとしたら、それはそれで素晴らしい事だと思います。特にこれからの世の中を担ってゆく若い人達には是非ドラッカーの著述に触れて頂きたいものです。
20世紀最大のグールーと呼ばれながら一般の人達の目に触れられなかった宝物が、多くの人々の思想を形作る礎となる。ドラッカーさんも草葉の陰で喜んでおられるかもしれません。