酩酊

最近めっきり涼しくなりました。
暑い頃は見向きもしなかった暖かいお茶が恋しくなる季節です。
そして今、S司のお土産のメープルティーを頂いています。この連休に入ってから殆ど毎日、朝のひとときをメープルティーでティータイム。ゆったりと落着いた気分にひたれます。本当に幸せなひとときです。
実はこのお茶、家族の間ではいたって不評で誰も手を着けません。それでは勿体ないからと私だけが飲み始めたら、これが結構癖になっちゃいました。
少々きついくらいの甘ったるいメープルシロップの香り。それを口に含んだ瞬間、甘さなぞ全く無くその意外性に裏切られたような気分。香りが無ければ普段飲み慣れている安物の日東紅茶と同じ味わい。
この予期せぬ驚きが快感で飲み続けています。甘く無い事は百も承知の筈なのに、カップを口に近付ける度、この強烈なフレイバーに騙され、口に含んだ瞬間の意外性を楽しんでいます。
アルコールなどよりもこういった飲み物の方が私には合っているようです。
世の中にはアルコールの好きな人が多く居られます。私の友人の中にも、喫茶店でコーヒーを飲むくらいならビールでも飲んでいた方が良い。と言う人種が数名います。不思議な事に喫茶店のコーヒーとビール大瓶の値段って昔からほぼ同じなんですね。
私もお酒は嫌いではありません。若い頃は毎週のように飲酒運転もしていました。それが年を重ねるに従い、酒量、回数伴に減り、今では外で飲む事は殆どありません。
昨日もS司を伴い家族三人で外食でしたが、オーダー時に「お飲み物は?」と聞かれ「お茶。」と即答。あっ、S司には勧めてやれば良かったかな。その方が一品少なくて済み、その一品よりビールの方がずっとお安い。


酒の起源は古く有史以前からのもののようです。猿でさえ木の洞に蓄えた木の実を自然発酵させそれを飲み酩酊を楽しんでいるそうです。一般に猿酒と呼ばれているそうです。
また、犬、牛馬などの家畜も酒を与えるとそれが癖になり自ら欲しがります。動物というものは本能的に酩酊を好むかのようです。


先日ある事がきっかけでT哉に聞かれました。
「お父、○井法子って知ってる?」
「知っとるわ。ノリピーだろ。」
いくら芸能オンチでもそれくらい知っています。特に最近はNetニューズでもこの名前が出てこない日はありません。
ただ昨今のこの大騒ぎに何か違和感を感じていたものですから子供達相手に早速持論を展開。子供達は迷惑そうな顔をしながら神妙に聞いていました。


先にも述べましたが、人間というものは本能的に酩酊を好むようです。その手段は、国や地域、宗教、時代や経済状況などにより様々です。同様にそれを取締る、禁止する法も国や時代で様々です。
イスラム社会では宗教上アルコールそのものが禁止されています。注射をうつ時の消毒用アルコールまで禁止している国もあります。かと思えば同じイスラム国家でも公式的にだけ禁止で一般庶民の日常の飲酒にはお目こぼしという国もあります。
アメリカでも一時期禁酒法というのがありました。アル・カポネとFBIのエリオット・ネスがシカゴで戦いを繰り広げていた時代です。
ある国では麻薬を所持していただけで極刑となります。「厳しすぎるのでは?」と思うのは日本に住んでいるからであり、彼の地では「あたりまえ。」なのでしょう。
芸能界とドラッグは昔から【親和性?】が特に良いようで、前衛的な音楽の創造活動をしている人達がLSDを常用しているのはごくあたりまえだった時代もあります。
そういえば随分昔の事ですがポール・マッカートニーが日本公演に来たもののドラッグが見つかり空港から強制退去って事もありました。ビートルズ解散後の事です。それほど当時はドラッグで大騒ぎする事ではなかったのです。もちろん法的には禁止されていましたが、せいぜい交通違反程度の感覚だったのでしょう。
まだあります。太宰治も麻薬常用から抜け出す為にアルコールに切替えたと、斜陽か何かで告白していたと思います。そんな小説を上梓しても捜査対象とならない、当時はそんな大らかな時代だったのかもしれません。
東南アジア、中南米などの極度に貧しい国々ではアルコールのような高級品は庶民の手には届きません。そこでは手軽に栽培できる植物(現地では雑草のようなもの)からアヘンやコカインを精製しこれらを常用しています。一般的に言われているドラッグという名詞が意味しているように、これら酩酊を起こさせる物は本来薬でもあるのです。適量を守っていれば、心や身体の痛みを和らげてくれる有益なものです。日本でも昔からよく言われています。「酒は百薬の長」反対に「気違い水」
ある地域・時代では法で禁じられ【悪】であっても、別の地域・時代では【善】となるものは数多とあります。ドラッグの場合は【善】とはならないまでも【悪とは言えない】となりえる事は充分ありえます。
かといって法治国家に住んでいる以上、法遵守は義務です。皆が法を守る事で治安が維持される訳でその恩恵に浴するには守らなければなりません。そしてその法を犯した場合の罰則が定められているのであればそれを受け入れなければなりません。それは当然の事でそれを受け入れた後は更生し社会復帰する権利もまたあるのです。
Netでの今の大騒ぎ、まるで人間ではないような、殺人者と同様の重罪犯のような文言、まるで交通違反も殺人も同じ重みとでも思っているようです。
ドラッグはその所持、使用が違法ですが同時に入手の為に別の犯罪を犯すという恐れがあります。彼女の場合自分で稼いだお金で入手している訳で周りに危害を与えていると言えるほどではありません。この騒ぎの中に「極度に貶めてやりたい。」という周りの卑しい気持ちが見え隠れしているように感じるのは私だけでしょうか。


そしてこの私、現役の頃ですからもう随分前の事になりますが、一度ハッシシを吸った事があります。ネパールの貧しい農村ではごくあたりまえに常用されているものであり、何か縁があり仲良くなったりすると必ず勧められます。ちょうど煙草を勧めるように。
ハッシシも煙草に混ぜて吸うので、煙草+α程度の感覚なのかもしれません。
こうやって異文化に触れる機会があれば日本の文化と比べる事ができます。日本の中にしかいないと気付かない微妙な感覚の違いが世の中にはごくあたりまえにある事をいつも念頭に置いていたいものです。