昭和は遠くなりにけり。

【閉店セール開催】と銘打った案内はがきが来た。IBS石井スポーツからで、名古屋支店を9/23、大阪支店と福岡支店を10/25で閉店するとの挨拶状を兼ねていた。
2年ほど前、職場が伏見の方へ移ったので仕事帰りに栄まで足を延ばし、その時に顧客登録をしたものと思う。その後も時々案内状が来ていたが何かが欲しいって事もなく、わざわざ栄まで行くのも億劫で全く行っていない。
ただその時応対してくれた店員さんが、何かと話しかけてくる気さくな中年の小太りのおっさんで、昔とはえらく雰囲気が変わっていた。
そう、昔足繁く通っていた頃の店員というと、まるでアメ横のジャンク屋のオヤジのように「売ってやる」という態度がありありだった。場所も笹島交差点、中村警察署の道路を挟んで反対側にあった頃の事である。そんな昔話が解かる人は今ではもう殆ど居ないだろう。
当時の店員はアルバイトばかりで、大抵が先鋭的な連中で、店に来る一般客を半分見下しているような者ばかりだった。それがいかにも商売人然としたおっさんに変わっていたのである。顧客層が若者から初心者中高年に変わり、その顧客をリピート性の高い顧客として囲い込む為には以前の接客態度ではやっていけないと経営方針を転換したのだろう。
しかしそれでも顧客をネットストアに取られ店舗を構えての営業が難しく業務縮小せざるをえなくなってしまったのだろう。
今の中高年諸氏は買い物上手だ。リアル店舗で現物を見て確かめ、不明点は店員に聞き、買うのは価格の廉いネット店舗からである。リアル店舗は商売敵の販売のお手伝いをただでやっているだけである。店舗を構えている以上経費がかかりその分を商品価格にオンせざるをえない。価格ではネット店舗には太刀打ちできないのである。
こうやって現物を確認できるリアル店舗が淘汰されてしまうと、顧客も確認や質問できる所を失ってしまう。そうなると市場自体が縮小均衡に向い、いずれはネット店舗でも淘汰が始まる。市場拡大の為には顧客への啓蒙、情報発信、教育が必要となり、顧客が集まるサロンのようなものが必要になってくる。今残っている山用品店は経営者がガイドの資格を持ち、顧客を募り一緒に山行する事で継続した顧客との関係を築いている。これしか生き残る道はないのかもしれない。当然ひとりで面倒の見れる人数は限られている。かつての好日山荘IBS、ICIのような大規模な店舗展開で数のメリットが享受できるモデルにはなりえない。
戦後の復興期から経済成長期にかけて隆盛を極めた山の世界と山用品店は、若者から中高年へと顧客層が変化するに従い、市場や流通形態そして営業形態までもが淘汰の波に曝されているようだ。
ここでもまた昭和という時代の名残りが消えようとしている。