予期せぬ雨に

暫く前にこんなTVCMがあった。
固い木の実の中身を食べようとカラスが道路にそれを置く。車に轢かせて殻を割る為だ。
そこへ走ってきたBMW。まるでタイヤに目が付いているかのように木の実の直前で巧みなステアリング。木の実という障害物をかわし何事も無かったかのように駆け抜けて行く。
当てが外れたカラスはさも悔しそうに大きな声で鳴き続ける。
これを見た時に遠い昔の同じようなTVCMを思い出していた。
雨上がり、歩行者の横を通る車。その行く先には水溜り。あわや歩行者に泥水が…、その寸前でこれもまるでタイヤに目が付いているかのようなステアリング捌き。充分減速したこの車は水溜りを綺麗に避けて泥はねも起こさずゆったりと通り過ぎてゆく。
乗っている車のタイヤが今どんな所を通っているか、今は見えなくても先程まで見えていた道路のどの部分にタイヤがあるのか。
車なんてものは歩行者よりもずっと大きく道路を占有しながら走っている。当然それに見合って責任も大きい筈だ。周りの人や物に対し相応の気配りや配慮があって然るべきである。それが車に乗っている者の責務である。
その気配りを円滑に行う為にも洗練された車輌感覚を身に付けるべきである。
これがこのCMから得た事であり、以来私のステータスにもなっている。


本日帰宅時、予期せぬ大雨となってしまった。K駅から自宅まで土砂降りの中、約20分の歩きである。
タダでさえ大雨で難儀なところに、猛スピードで飛沫をあげながら平然と走る車ばかり。既にズボンの裾はぐっしょり。いくら濡れていても上半身まで泥水を掛けられちゃあ堪らん。
今の人達は歩行者に泥水を浴びせても平気でいるようだ。気配りが出来ないのか? いやその前に気付いてもいないのだろう。常識がないのかそれとも知恵遅ればかりなのか。いつからこんな馬鹿者ばかりの社会になってしまったのだろう。明かに世の中の一般常識が退化している。いややはりIQ自体も低下しているとしか思えない。なんでこんなアホばかりになっちゃったのかなあ。


もうすぐ家、近くのカーブで向こうから1台の車。「ああ、またかけられる。」と思っていたら急減速。そして直前の水溜りを器用に避けて通り過ぎる。一瞬昔見たCMが甦る。
「ヘエ〜、上手いやんけ。」CMのような高級車ではなくカローラバンだったが充分絵になっていた。
まだ居るんですね〜。人に対する配慮と卓越したドライビングテクニックを持ち合わせた人が。
なんだかこれだけで今まで散々なめに会わされた事も忘れてしまった。
大雨の鬱陶しい日でもこんな爽やかな配慮に出会うと心の底からHappyになれます。