地に落ちた品位

二人乗り自転車2台の宣伝。実名こそ出してはいないものの、誰が見てもインサイトを貶している事は解かる。
プリウスの宣伝でここまでやるとは世界のトヨタも地に落ちたものだ。
もともとプリウスの方がインサイトよりひとクラス上位車種である。モデルチェンジを行えば旧モデルの販売は止めるのが今までの慣わしだった。それをインサイトの価格帯まで下げ新旧平行販売というだけでも喧嘩を売っているようなものなのに、それに輪を掛けてネガティブキャンペーンまで張っているようなものだ。
昔のトヨタはこんなはしたない会社ではなかった。先進的な技術が他社に追いついていない事を自覚していた所為か、品質と顧客サービスで地道な販売活動を行っていた。販売のトヨタとまで言われていた所以である。
私は元々はトヨタファンだった。当時から【外注いじめ】がよく話題に上っていたが、我々顧客からすれば「仲間内で切磋琢磨しているんだなあ。」と感じていただけで、他社に危害を加えるような邪悪さは無かった。
むしろトヨタに無い技術を持つ他社に対する尊敬と自らの謙虚さが随所に窺えたものだった。
30数年前の排ガス規制の時代、最も厳しいと言われた米国カリフォルニア州のマスキー法(だったっけ?)を逸早くクリアしたホンダはそのCVCCの技術を他社にも供与する事を決めた。さすがは宗一郎さんである。自社だけの事を考えるより自動車業界いや世界中の人々の健康を最優先した結果の判断である。その技術供与をトヨタも無償で受けたのである。結局は自社ではものにすることが出来ず触媒に頼る事になってしまったが、そういった業界内の恩義をわきまえ、例え販売が好調でも他社への気配りや業界全体が良くなる方向性を保っていた。
それが近年おかしくなっている。たとえ切羽詰っていたとしてもこのようなプリウスの宣伝は無いだろう。
GMを抜き世界一になったことで天狗になってしまい、その後の急転直下の世界的な販売不振で赤字転落、天狗の気持ちのままなりふり構わずモラルもなにもかも無くしてしまったようだ。


次回は我家もプリウスにしようかと考えていた。インサイトよりひとクラス上で同価格なら凄くお得だ。しかしこの宣伝を知りその気は全く無くなってしまった。ハイブリッドにするならトヨタ車以外を選ぶ。たとえ最もお値打ちだと解かっていても、こんな非常識な宣伝をするようなメーカーの車なぞ絶対に乗りたくない。それこそオーナーの品位を疑われる。
【車がステータス】なんて時代はとっくに終焉を迎えていると思われるかもしれないが、違った意味でステータスを表しつづけている。
あれほどトヨタが力を入れているレクサスブランド、相変わらず輸入車ユーザーの取り込みは進んでいない。セルシオ、クラウンからの乗換えばかりで結局はトヨタブランドからレクサスブランドへのカニバリゼーションが起こっているだけである。それもその筈、レクサスオーナーにはマナーの悪い車が多いのである。クラウンかセルシオでの横着運転がそのまま買い換えたレクサスに移っている。「あんな車に乗っていたら自分も同列に見られてしまう。」輸入車オーナーの殆どはそう思っているに違いない。中古のベンツやBMWに乗っているヤンキーは別にして、極一般的なそれらのオーナーにはレクサス乗りのようなマナーの悪い人は滅多に見かけない。
そういえば御在所の帰り、日光川を越え庄内新川橋の手前までの渋滞区間でレクサスの搬送トラックの横着運転をよく見る。空いている左車線を抜け、橋の手前で強引に割り込んでくるのである。高級車の看板を付けて走るのならもっと周りの迷惑にならない運転に努めればよいものを。こんな所にも所詮レクサスは心の卑しい小金持ちの乗る車であることを表しているのかもしれない。


話をハイブリッド車に戻して、なぜハイブリッド車に人気が集まるのか。
環境に優しいという点もあるが、それだけで人はそれを選ぶ訳ではない。低燃費という経済合理性があるから選ぶのである。懐に優しくおまけに環境に優しい車を選んだ私は人間的にも立派。こう思いたいのであるが、最もウエイトが大きいのはやはり低燃費という事。
しかしもう一度考えてみて欲しい。トータルなコストを。
我家のデミオ、キビキビ走り本当に楽しい車である。1.5Lエンジンながら常時15km/Lの低燃費をたたきだしている。1.3Lでもそこそこの走りでこちらならもっと低燃費である。
仮に1.3Lモデルでも15km/Lだとして、車輌価格は120万円。ハイブリッド車が25km/L走るとして車輌価格200万円。その差80万円。仮にガソリン価格が100円/Lとすると、30万km走ってやっと車輌価格の差分80万円がペイできるのである。今時30万km乗る人いますか? 1万km/年だと30年もかかる訳です。昨年のようにガソリン価格が高騰して200円/Lだとしても15万km走ってやっとペイできる訳です。経済合理性だけで考えるとちっともメリットは無いのです。
既に11万台のバックオーダーを抱えているプリウス。この11万家庭の人達、この辺りの事をご承知なのでしょうか。