ダウニング街の日々

もう二昔前にもなろうか、この本が発刊されたのは。
上下2巻構成で1巻が3千円ほどしていたように思う。書店で目にして買うかどうか迷った挙句、手持ちのお小遣いが少なかった為諦めた本だ。
そう、皆さんご存知の事と思いますが、マーガレット・サッチャーさんの回顧録である。
【揺り籠から墓場まで】と謳われた英国の福祉国家政策が財政的にも限界を来たし、その税負担や非効率な行政から経済が停滞いていた当時、根幹から英国の行政改革を断行し国家を立ち直らせた【鉄の女】の物語である。
いかに脳天気な私でもサッチャーさんの偉大さは認識しており、それなりの興味はありながら【まるビ】なるが故に断念したのだ。
温和でいながら機転と鋭い洞察力、そして鉄の意志で英国を甦らせたサッチャーさんの語録は数多く、今でも多くの人の記憶に残っている。


「あなたはこの国の乳幼児からミルクを取り上げるのですか!」という問に対して即座に、「乳幼児にミルクを与えるのは母親の仕事であって、国家の仕事ではありません。」
「小さな政府で最大限のサービスを。」というスローガンで非効率な政府機関を民営化、或いは民間企業へのアウトソーシング。これらサッチャーさんが行った手法は全世界の政府がいまだにお手本としている。(口先だけでなにひとつ出来ていないお粗末な国もありますが。)
また、当時飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあった日本企業を英国に誘致して国内経済の活性化を図ったり。
極めつけは「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちになりません。」でしょう。福祉に注力するにしても経済合理性に適っていなければ上手く行く訳が無い事を如実に現している。
ニュースステーションに出演された時、久米宏氏との対談で、海外からの「日本人は働き過ぎ。」との批判に対してどう思うかと聞かれ、「働く事はちっとも悪い事ではありません。私も日本の方に負けないくらい働いています。」この言葉を耳にして私自身も凄く自信が持てた。「そして努力しない者(働かない者)に限って努力する者(働く者)を悪く言うものだ。」と悟ったのである。


10年そこそこという短い在任期間の間に断行した改革は目覚ましいものである。その英国の復活から既に20年近くになろうとしている。改革の遅れたスウェーデンなど重税に耐え切れなくなった若者が国外へ逃れ始めるという流れもあったが今はどうなのだろう。他人事ではなくこの日本も同様の事が始まっているのである。少子高齢化、少ない労働人口で高齢者を支える。確定拠出という錦の御旗に護られて高額年金を受給している高齢者を支えているのは低所得の若者である。負担ばかり大きくて先も読めないんじゃ、日本だって若者が逃げ出してあたりまえ。
「あなたはこの国のお年寄から無償医療を取り上げるのですか!」と問われてサッチャーさんなら「お年寄の面倒を見るのは家族の仕事です。国家の仕事ではありません。」と言うのだろうなあ。


毎日早めに出社してNetでニューズを見ているが、今日その中に「マーガレット・サッチャー元英首相が認知症を発症している。」というニューズがあった。御歳82歳。先のレーガン元米国大統領と言い、偉大な人にも起こるごくあたりまえの病気なのである。
出社前、自宅でも一応新聞に目を通しているがそんな記事は無かった。帰宅後夕刊にも目を通したがやはり無かった。
新聞のニューズのプライオリティーがまともじゃないのは衆知の事実。今更驚く事ではない。オリンピック期間中なぞその最たるもの。「紙から読み取る。」という事が昔人間の私に合っている所為かいまだに購読しているがもうそろそろ止めてもよい頃かもしれない。Netの情報はPullタイプである。欲しいものを得るにはそれなりの努力が必要だが、努力すればしただけの見返りはある。新聞、TVなどのPushタイプは労せず情報を得られるが、情報操作の影響がモロに現れる。公平な情報を得るにはNetの方が適している。となるといよいよ日本の新聞社も放送局も先が見えてきたのかな。自業自得、自業自得。いずれ潰れるものなら早く潰れてしまえ。