残り物=遠慮の塊

帰宅するとまだ一箱赤福が残っていた。
食後早速お相伴に与る。珍しくS司も帰りが早く夕食も一緒だったので、S司とひとつづつ分けあう。
かみさんが恨めしそうな顔をするので「食べる?」と聞くと「いらない。」と言う。ここで食べてしまうと後で「一生恨んでやる。」と言われるのは目に見えている。
「いいわ。食べなさい。」と言っても「いらん。」
「半分こする?」 「いらん。」
そんなに言うなら本当にいらないのだろう。そう思いぺろっと一口。
その瞬間「一生恨んでやる。」 やはりこの言葉を聞く事になってしまった。
「いらん。って言ったじゃん。」
「欲しいのは解ってるくせに。」
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。本当に女とは不可解な生き物である。
そして寅屋の栗ういろうを出してきて、ひとりで食べ始めた。
「一切れ頂戴。」「やらん。」
まるで駄々っ子である。もう相手にならず風呂へ入ろっ。


風呂から上がると思ったとおりテーブルの上それも私の場所に置いてある。
意地でも食ってやらん。 あっ、結局この私も駄々っ子同様であった。
似た者同士、全く飽きもせずよくやるよ。


一日経った赤福は餅が少し固くなっており出来立てより腰があって旨い。それに餡も若干滑らかさが無くなっているが、熟成が進むのか味はまろやかになっている。
そうだ、これが私の舌が覚えている赤福の味なのだ。味が落ちた訳ではなかった。良かった良かった。
しかし、私の舌には一日経った物の方が合っているって事か。普通なら味落ちした物である。
そうか私の舌はやはり貧乏舌だったのか。
何故か複雑な心境のtanuoさんなのである。