近未来のビジネスモデル

御在所通勤敗退後、家で新聞を見ていたら、コミュファのチラシが入っていた。TVでも宣伝しているようだしよくやるよ。KDDIへの身売りはもう決まっているんでしょ。
家も光を検討した時に候補に挙がっていた。プロバイダ料金だけで見れば廉かったが他のサービスがプア。その当時はHP用のサーバースペースも用意されてなかったような…。もっともその頃はNTTでさえ光電話とのセットは無かった。IP電話ISP、HP用無料サーバ、その他ユーティリティ、全てを含めて総合的に判断すると結局はYahoo BB って事になってしまった。
それが今日のチラシでは光電話、ISPの他、HP用50MB、メール用100MBの容量となっている。大分成長したな、とは思うが、HP50MBは今時滅茶苦茶プアである。私の場合、Yahoo BB の300MBでもいっぱいで他に無料サーバーを借りそこへリンクしている。尤も誰も見ていないだろうが。そしてメール用は2GB。こちらは少なくてもそう支障は無いが、全体的に見てやはりサービス不足は否めない。だから廉いのだろうが、とどのつまり安物買いの銭失いになってしまう。ビジネスとして成立させるには提供するサービスが貧弱過ぎるという事だ。光による通信速度の速さはサービスのひとつではあるが全てではない。それをあたかも速いことだけで商品として成り立つような宣伝をしても、騙されるのは一部の人達だけである。中部全域に亘ってコミュファで独占とはいかない。


紙面の方では相変わらずMSが賑やかだ。ウインテルなぞと呼ばれ全世界から暴利を貪ってきたビジネスモデルも成長が鈍化し、大きくなり過ぎた会社を今後どう進めれば良いか舵取りに苦慮しているのだろう。
どこの世界にも共通して言える事だが、市場が小さな内は情報をクローズする事で提供するサービスの価値を高く維持できる。しかし市場の成長、成熟に従って情報のオープン化を止める事はできない。クローズに拘っていた企業が市場から見放されて行った類例は枚挙に暇が無い。当然MSも同じ道を歩む事になる。そのひとつが今日の紙面に出ていた設計情報の公開であり、収益の求め先もソフトウエアの販売のみから、検索エンジンに付随した広告宣伝費徴収へ進出しようとしている点である。
優位性を武器に一方的な値決めでわがもの顔に振舞ってきたが、これ以上それを続ける事は不可能だ。その優位性も自らの力で築いた物ではない。顧客が作ってくれたデファクトスタンダードである。それを無視し続け暴利の上に肥大化してしまったのが今の状況である。
ここらで独禁法を受け入れ、部門ごとに分割した方が良いのかもしれない。かつて分割されたAT&Tもそれぞれが立派に収益も上げながら社会貢献しているではないか。因みにその時分割されたベル研究所UNIXC言語の産みの親であり、ウインドウズの存在を脅かしつつあるオープンOSのリナックスUNIXを真似て作ったものである。発案者リーナス・トーパルズ(だったかな?)の頭文字とUNIXをくっつけてLinuxリナックス)。
そのベル研は今、ルーセントテクノロジーと名前を替えIT産業界に貢献している。


デファクトスタンダードという言葉は使っていなかったが一昨日(だったかな?)の朝刊、中日春秋にも似たような事が述べられていた。
長年争ってきたDVDの規格に決着がついた事に触れての内容だったが、もう10年も前の本を持ち出しご苦労な事で。【収穫逓増】なる言葉を引用していたが下手な訳語だ。原語では【Increasing returns】であり言葉通り「徐々に増え続ける見返り」である。return は収穫というより投資などのリターンとしてよく使われ、そのニュアンスが強い。いかにも農耕民族日本人の訳語である。
当時は前出のウインテルが時代の花形でありそれがよく引き合いに出されていた。既にそれよりずっと以前にビデオ規格争いでベータがVHSに負けていたのである。ここでも解るように、優れたものの方がそれよりずっと劣ったものに負ける事がある。それを決めるのは市場だがその尺度が規格の優劣ではなくその時の状況で【どっちが得か?】なのである。
この話になるとよくブライアン・アーサーが引き合いに出されるが、複雑系とは本来生命の根源を研究する事を目的としてサンタフェ研究所にあらゆる分野の研究者が集まり、その成果として出てきたものである。
世の中の一般的なものは普通は変異に対しそれを打ち消す方へフィードバック(負帰還)がかかる。こちらはDiminishing returns(これも【収穫逓減】なぞという難解な訳語がある)と呼んでいる。
それがビデオ規格、PCのOSなどでは正帰還がかかり、どちらか一方が市場を独占してしまう。この事が経済界で話題になり、それに似たビジネスモデルを探そうと躍起になっていたのである。
しかしそのMSも寡占化の結果、もはや頭打ち。Googleの猿真似をしてNet市場に活路を見出そうともがいている。ビジネスモデルも多様であり規模によりその効率性は制約を受ける。独占してもパイ自体を大きくしない限りそれ以上の成長は望めない。


かと思えば昨日の夕刊には「【欧州炭素銀行】設立を提唱。」との記事。今はまだ馴染みが薄いが今後はCO2排出権の取引が活発かつ一般的になる。排出権を債権化してのデリバティブが一般化するのだろう。
ノーベル賞を受賞するような頭の良い学者が近代数学を駆使して金融商品を開発し、それがまた新たなビジネスモデルを生み出してゆく。
だんだん実態の無いものを対象とするようになり大丈夫なんですかね。
サブプライムローンもその商品のひとつであり、第2、第3の危険な金融商品が現れない保証なぞどこにも無いのですが…。