よしなしごと

帰宅時のカカバス内での雑談。
「このまえ、お兄ちゃん(T哉)に叱られてS司が泣いとった。」
今の生活態度のだらしなさや、学校での目標などについてお小言を頂戴したらしい。
23歳(来月には24歳)にもなってそんな事で泣くとは、いかにも【うぶ】である。T哉だって人間性を否定するような酷い事は言わない。それでも泣くほどまだまだ子供なのである。
S司にとってT哉ってどんな存在なのだろう。たったの一才しか違わない兄なのだが、あたかも親であるかのようである。両親がだらしなさ過ぎた所為か長男のT哉がいろんなところでフォローしてくれているのだ。


因みにT哉のみが血液型Oで、我々夫婦とS司全てB型である。事実かどうか解らないがO型とB型は相性が良く、大抵はO型人間にB型人間は支えられているそうである。とすれば我家もその例外では無い、と言うことになる。そんなT哉も幼稚園の頃は仲間外れになるのが嫌で人前で自分の血液型をB型と偽っていた。輸血されるような事がなくてよかった。


同じく幼稚園の頃、S司が入園してからというもの、休み時間になると必ずS司はお兄ちゃんのところへ行っていたらしい。それをいつも授業(と言ってよいのかどうか解らないが)の始まる前にS司の教室へ連れていっていたようだ。それで【弟の面倒見の良いお兄ちゃん】と幼稚園中で評判になった事もある。


小学校へ上がってからもいつもお稽古事が一緒。いつもお兄ちゃんの後を追いかけていたのである。何をやらせてもグズ、ドジのS司にとって、なにもかも人並以上のお兄ちゃんは頼もしいスーパーマンだったのである。そして学校の勉強でも解らないところを懇切丁寧に教えてもらっていたのである。T哉の大学時代、家庭教師のバイトでの評判の良さはオツムの弱いS司を教えていた事が幸いしていたのかもしれない。


逆にT哉の目から見てS司はどんなだったのだろう。
たとえ幼い頃からでも、S司が同年代の子供より何もかも遅れている事は気付いていたと思う。その事が「自分がしっかりして弟の面倒を見なければならない。」という考えに至らしめた可能性が高い。
他所の家庭では「年の近い兄弟の場合、上の子が下の子に嫉妬していじめる事がある。」とよく聞く。家の場合は兄弟喧嘩しない訳ではないがS司が弱すぎて喧嘩にならない。大抵は駄々っ子のS司をあやしていた。
下の子の精神年齢が低過ぎたのが良かったのだろう。親としてはあまり有難くもないのだが。


そのお兄ちゃんも社会人一年生。冬のボーナスで家族全員にお年玉をくれた。S司にとっては幾つになってもお兄ちゃんは偉大なのである。
そして子供からお年玉を貰った我々夫婦も思い出すたび嬉しくて頬が緩む。このお年玉、記念にとっておこう。そして孫が出来たら自慢してやろう。「おまえのお父ちゃんから貰ったお年玉だよ。」って。