鳥の羽根

我家にはよく鳥の羽根が落ちている。庭でなく家の中である。
昔からそうなので私もかみさんも一向に気にならない。むしろこれがあたりまえと思っている。
犯人は実は私である。足が冷たいのでいつも象足を履いているからだ。テーピングテープやバンドエイドで補修はしてあるのだがそれでもその隙間からフェザーが出てくる。こんな安物はダウンよりフェザーの方が多いのである。いや寝袋だって山用はダウンだけでなく腰のあるフェザーが多く含まれている。
昔は街着としてドメゾンの羽毛服もよく着ていた。昔から家の中には抜け落ちたダウンやフェザーがいっぱいあったのである。
かみさんの友達など山とは無縁のお客さんには凄く不潔と映るらしい。それでも夫婦揃って羽毛に無頓着な二人は一向にお構いなし。

山用ではないが、我家の掛け布団は全て羽毛である。山用の羽毛製品からは縫い目などから羽毛が抜けてくるのが当たり前。それに比べ寝具としての羽毛布団からは全く抜け出てこない。よく出来ているものである。いや生地の厚みからして全く違うので当然の事なのだろう。山用であんな分厚い生地なぞ使われたら重くて堪らん。
昔は重い布団が当たり前だったが一度この軽やかさを味わってしまうともう戻れない。
そして最初に羽毛布団を買ったときに教えられた常識。これも大きなカルチャーショックだった。
保温は空気層の厚みで決まる。だから山では衣類など着込んだ上で寝袋に潜り込む。寝袋の上から何かを被せたりしたら折角の羽毛がその重みで膨らまない。…そう教えられて来た。
ところが布団屋さんが言うには「寒い時は羽毛布団の上に毛布を一枚掛けて下さい。毛布と身体との隙間を羽毛が埋める事で保温効果が上がります。」
山用の常識からするとそんなこと俄かには信じられなかった。でも騙されたと思ってやってみたら案外暖かい。掛け布団とミノムシ型の構造の違いもあるだろうが、一番大きな相違は街中それも家の中だと言うこと。−20度の稜線とは全く条件が違う。せいぜい0℃近くまで下がるかどうかの家の中じゃ布団屋さんの常識が成り立つようだ。
常識とはそれぞれの条件で全く異なるものなのである。