味覚

連休最終日、朝から雨。
Hangin' around
Nothing to do but frown
Rainy Days and Mondays always get me down.
ああ、今日は月曜日じゃなかった。しかし長い休みに浸りきった脳ミソを思うと明日からが思いやまれる。blue Monday ならぬ blue Sunday なのである。
しかし憂鬱なことばかりではない。雨の日は近所のクリーニング屋さんが割引になるのである。しっかりもののかみさんは夕べから洗濯物を用意して「まだ降り出さない。」と不平を言っていたが、今朝から上機嫌である。およそ家ほどなにもかも締まり屋さんはいない。そのかわり懐には大穴が開いていてセコセコと節約してもジャジャ漏れなのである。その大穴にはS司という名前が付いている。
そのS司を送り出した後、またかみさんとランチタイムデート。今日は志向を変えてわざわざ名東区まで出かけた。あにはからんや、お目当てのお店は閉まっていた。急遽予定変更しその傍のイタリアン。この辺りはリーズナブルなお店が多い。日曜でもランチタイムメニューがあるのは有難い。スープ、メインディッシュ、食後の飲み物まで付いて¥980. 3桁円で収まる処は今時珍しい。
「折角ここまで来たのだからBさん宅に寄ろうか。」なんて話が出たが急に行っても迷惑かもしれないと中止。食事をしたばかりなのにかみさんが「たこ焼きが食いたい。」と言う。かみさんが食べるたこ焼きは瑞穂区にある【たこ焼き三丁目】のたこ焼きである。これ以外は絶対に食べない。「どうせ暇だし行ってみるか。」となり先ずやっているかTELで確認。呼出音10回目にしてやっと出た。休みかと思ったが営業中。相変わらず大忙しのようだ。電話予約も出来るのだが、待ち時間がない代わりにチョイ冷めを渡されるのである。保温はしてあるのだが、たこ焼きなんてのは焼きたてのアツアツでないと旨くない。待つのが厭で電話予約を何度かしたが、味に雲泥の差があり必ず待つ事にしている。大体1時間くらい待たされるのはザラである。さんざん待たされた挙句の焼きたてアツアツはどんなものでも旨く感じるものである。鰻屋が客の顔を見てからでないと捌き始めないのと同様、空腹は最良の調味料である。
名東区のイタリアンを出て三丁目に向かう。我家からBさん宅、我家からSさん宅と、昔よく走った道だが久しぶりに走ると時の流れを凄く感じる。何もかもが変わってしまっており所によっては道路までが変わっている。つい道を間違えたかと思ってしまう。そうあの頃から30年近く経っているのである。
独身時代に住んでいた虹ヶ丘団地なんて昔の面影すらない。個人山行の時などよくここに集まってから出かけたものである。当然かみさんもその頃の記憶が色濃く残っている筈である。
途中でかみさんが「S司の学校を見ていく。」と言うので若干コース変更。いつもはその裏の抜け道を通るのだがS司の通っているであろう北東隅の校舎を偵察する。ホント古く汚い校舎だ。北側から正面へまわるがやはりデカイ。この敷地内にD大の敷地がいくつ入ることやら。かみさん曰く、「S司がね、お昼を食べに行くのに疲れてしまうんだって。」研究室から学食までが遠くて疲れるのだそうだ。そんなに大変ならかみさんの弁当を持って行けば良いのに。しかしいつも手抜きの疎弁(中身が疎らでガサガサ)だから厭なのだろうか。


三丁目に着いてから結局1時間待ち。以前はここに来ればよくSさん宅に寄ったものだが、たぶん留守だろう。今日も山奥の別宅に野良仕事に行っているに違いない。そうだ、S司が帰ってきたら連れて来ると言っておきながらまだだった。バイトバイトで時間が無いからなあ。男の子の居ないSさんは殊の外S司を可愛がってくれる。並みとは少し違っている事を承知してかよく【天才シンちゃん】と呼んでいた。そう言えば他の皆からもうけが良かったなあ。少しおつむが足りないがやる事に罪がなかったからなあ。
いつぞやの忘年会の時なぞ、お寿司に付いている醤油のはいったビニル容器を自分のオチンチンのように摘まみ、立ち小便をするようにかけていた。皆それを見て大笑い。Bさんなぞ涙を流しながら「俺も職場でやってやろう。」それを聞いた奥さんに叱られていた。


やっとたこ焼きにありついたかみさんは早速車の中で食べ始める。行儀が悪いなぞと思うなかれ。これが三丁目のたこ焼きの正攻法の食べ方なのである。アツアツを熱い内に食べてしまう。冷めてしまったらいかに三丁目のたこ焼きといえども、そこらのマーケットの一角で売っているものと同じなのである。
食べながらかみさんのグルメ談議。
「焼き鳥屋でもやろうかな、それかコロッケ屋。コロちゃんのコロッケみたいな不味いものより私の方がずっと旨いよねえ。」
「チェーン展開しているのは均一の味でないといけないそうだよ。」
「でも流行っている所って不味いものばかりだね。私の方が余程旨い。コメダのパンだってちっとも旨くない。あんなものよりゴーシュ(近所の喫茶店)のサンドウィッチの方がずっと旨いでしょ。」
「サンドウィッチなんて皆同じ素材使っているんだからどこでも同じじゃないの。」
「パンが全然違う。コメダのってパサパサでしょ。」
そう言われればゴーシュのパンってけっこうもっちりしていたな。皮の部分なんて噛み切れないくらいの粘りがあった。へえ〜そんな違いを目聡く見分けているのか。
そして流行っている所を貶し続けている。
「確かにあんたの味覚センスは認める。だけど玄人うけしたからって流行るとは限らないよ。一般的な人はそんな繊細な味なんて解からないんだから。一般うけするような味にした結果がコロちゃんの味でありコメダの味なんじゃないの。」
貧乏舌の私には高級な物の味より庶民的な味の方が馴染みやすいのである。
やはりかみさんには食べ物商売なんてムリムリ。