ガラス屋さん

子供二人が帰って来た為、家の中が倉庫と化している。
二階の空き部屋に荷物を押し込み、その時に窓ガラスにヒビが入ったようだ。
金網入りなので直ぐ割れ落ちる事は無いが、放っておくと割れ落ちるまで気付かないだろう。人に直撃って事は無いだろうが車に直撃は充分考えられる。だってAuも8もほとんど停めたまんまなのだから。
前々からかみさんに言われていたが、休日中でもあることだしやっと昨日重い腰を上げた。
Netで電話帳検索し、近所のガラス屋さんをピックアップ。さすがにNetでオーダーとまでは行かず、片っ端から電話をかけまくる。…が、電話には出るがどこも休みで請け負えないとの返事。
おいおい、サービス業だろ。そんな事で良いの? 会社組織となっていても皆家族経営である。昔の商売屋さんは休日だからと言って仕事を断ったりしなかった。いないのなら仕方ないがいるのなら普通は受けるものだと思うが…。お客さんだって休日しかお願い出来ない人も居る訳だし。
最後に一番小さそうなガラス屋さん(他は皆**会社となっていたがここは**ガラス店となっていた。)に電話すると、お婆さんらしい人が出て、「今山へ行ってるけど、午後3時くらいには帰ってきます。そのころもう一度電話して。」旦那が帰って来さえすれば仕事は請けるらしい。やはりこれくらいのお歳の人でないと商売への取り組み方が違うのかな。
やれ顧客第一だ、CSだ、などと宣わっていても口先だけかどうかはこんな所に如実に表われる。
このガラス屋さんの地図をプリントアウトして窓ガラスも外しておく。しかし無茶苦茶重いなあ。一体何mmの厚みなんだろう。嵌める時注意しなくっちゃ。


3時過ぎに出かけた帰りに直接寄ってみた。地図のおかげで場所も直ぐ解かった。間口一間ほどの入り口に軽トラが停めてありその奥でお爺さんが何やら仕事をやっている。入って行き話しをすると直ぐ対応してくれる。少々耳が遠いようだが見るからに好々爺そのものである。
持込んだ窓ガラスを見て、「これは高いよ。」透明ガラスで斜めの金網入りは最も高価だそうな。同じ斜めの金網入りでも模様入りだと半額くらいらしい。どうせまた子供に割られるかもしれないのなら、「じゃあ、その廉い方でお願いします。」と言ってしまった。マルび親爺丸出しである。
ガラスの在庫を探すが適当なのが無いようだ。透明のもので丁度家のものとほぼ同サイズのものがあり、「これでやったげるわ。お値段は廉いほうでいいわ。」商売げの無いお爺さんである。いやこういった臨機応変で細かな対応が顧客リレーションを深める手だてとなっているのかもしれない。経営学などの横文字しか頭の中に無い通称勝ち組のエリート諸氏より、今まで積上げてきた経験から得た生きた手だてである。結局は商売も含め何もかもが人と人との繋がりの上に成り立っているのである。自分だけ上手くたちまわろうなんて考えは直ぐ見透かされてしまう。そんな者は誰も信用しない。
顧客に喜ばれ、自分も不良在庫の処分ができる。これも横文字好きの人なら「Win-Winの関係だ。」などと耳タコ発言するのだろうな。
ものの30分もかからない内にガラス交換完了。サッシの分解、組立ても手馴れたものである。ただ話しをしていると物をよく置き忘れ、「どこへやっちゃったかなあ?」すかさず「ここだよ。」とフォローを入れなきゃならない。これもまた楽しからずや。


帰宅後、かみさんにかかった費用を請求すると、「なんでそんなに廉いの?」職場で同種類のガラス交換をしたときに家の半分くらいの大きさで1万円ほどかかったらしい。
「そりゃ、私のテクニックですがな。気になるなら正規のお値段を貰っても良いよ。」と言ってもきっちり請求額しかくれなかった。
しまった、倍の値段を言ってへそくれば良かった。


今度ガラスが割れたら、またこのガラス屋さんにお願いしよう。そう、この私もこのガラス屋さんの生涯顧客に取り込まれてしまったのである。そしてご近所でガラスが必要になった時は、このガラス屋さんを熱心に推薦するのである。このガラス屋さんのシンパになってしまったのである。
電話した時断られた他のガラス屋さんには絶対頼まないのである。