水遊び

一昔前、巷でアウトドアブーム真っ盛りの頃のことです。
我家でも古い山道具を使い、子供達を連れてキャンプにでかけていました。
キャンプって食う為の仕度をしているか、食っているかのどちらかで、後は寝ているだけ。暇を持て余し近くの山を散策するか、川で水遊びをするくらいしかやる事が無い。
その頃です。昔の山仲間のK君がファルトボートを買ったのは。(山から足を洗った連中はカヌーに嵌る人が多い。)
家族ぐるみで一緒に遊びに出かける時もファルトボート持参でした。真ん中に子供を乗せて、2人揃ってのパドリングは見ていても微笑ましく、とても羨ましいものでした。
「ではうちも買おう。」となり艇選び。K君は電車でも出かけられるようにと解体できるファルトボートにしたのですが、他の荷物も含めると30kgにもなる物を背中に担いで出かけるなんて実際には無理。車で運ぶのなら組み立ての手間の要らないポリ艇となりました。
ファルトボートは、木材のフレームの上に袋状の防水布を被せ艇体とするので、浅瀬で底を擦ったりすると破れて浸水します。補修やら保守も大変です。無精者の私には絶対無理。他にインフレータブルカヌー(ゴムボートのように空気で艇体を膨らませて使用します。)も出始めていましたが、これもパンクに弱く、また足踏みポンプでは膨らませるのが大変、など諸処の理由から対象外でした。
その後のキャンプは必ずウォーターフロントへ。海へ川へ湖へ必ずカヤッキングと絡ませて。K君一家とご一緒しなくても必ずワゴン車の屋根にはカヤックが載っていました。日帰り海水浴でも必ずカヤック同伴でした。完全なクローズドデッキで大人1人しか乗れませんがスプレースカートを付けず、股座にS司を、デッキの上にT哉を乗せて沖合いまで漕ぎ出したものです。子供用のライフジャケットも着せていたので溺れる心配も無く水に飛び込み泳いだり、疲れたら波間を漂っているかカヤックのデッキに這い上がったり。T哉などひとりで乗りたがり沖合いまで探検に出かけていました。また、カヤックの後ろに子供用ゴムボート、その後ろの鮫の形の浮きを繋ぎ、お父さんが牽引役。あれだけ引き連れると滅茶苦茶パドルが重かった。
そんな楽しみも子供達の成長と伴にだんだん出かけなくなってしまいました。カヤックは今ブルーシートに包まれたまま軒下で雨曝しになっています。


 



凝り性の私はパドルもレーシング用です。リバーツーリング専門の方達が使う木製の厚ぼったい物ではなく、羽根のように軽いグラスファイバー製です。「エッヘン。」パドルの厚みも御覧あれ。そしてパドル面にはブランド品サイドワインダーのロゴが燦然と…。

以上自慢話でした。


御在所通いを再開して間もない頃、夏の暑さに耐え切れず愛知川へ出かけました。土曜日だというのに駐車料金を徴収され、吃驚したのがこの時だったような。
大瀞の橋から見下ろした時の愛知川の美しさに、「子供達に手伝わせてカヌーを持って来ようか。」
昔からここの水の美しさにいつも「跳び込みたい。」という衝動に駆られたものです。
最近ではNet上でも夏場の水遊びがよく紹介されているようです。昔から是非やってみたいと思いながら思い留まってきた事を、あっさりやってのけられてちょっと羨ましいような。
では何故思い留まってきたのか…。昔の山行にはそんな文化が無かったのだと思います。沢をアプローチにすることはあっても極力濡らさない事が当時のセオリーでした。濡れは体力を消耗させます。身体全体を濡らすなんてとんでもない事でした。関東辺り奥利根の方では泳がなければ通過できない所が多く、仕方なく濡らしてしまうって事はあっても、積極的に水遊びを楽しむような文化は無かったように記憶しています。


水というものは皆さん軟らかい物とお思いでしょうが決してそうではありません。カヌーで水をキャッチしているとその硬さが実感できると思います。力いっぱい引き寄せても強い手応えで逆らいビクともしません。キャッチしている限りその硬さ故か艇も安定しています。その硬い水圧はかかり具合により沈んだ人が這い上がる事を許しません。滝などの落ち込み部分では水流が縦に巻いておりそこからの脱出を拒みます。湧き上り(泡立っているところ)では水の比重が小さくなり、たとえライジャケを着けていても浮力が無くなってしまいます。
そんな事を知っての事かどうか解かりませんが、昔は水の中に入る事をリスクと考えていました。そんな訳でへつり、高巻きが多く水際を通っても靴を濡らさずに通過できる人がもてはやされたものです。
どうしても濡らさなければならない場合でも極力浅い所、水流の弱い所を選びます。水の中には何が隠れているか解かりません。足を保護する為、渡渉する際も靴は履いたままが基本です。一度濡らすとなかなか乾かず、ふやけた足に豆が出来やすくなりますが。


と、大昔のセオリーではこうなるのですが、今は皆さん積極的に水の中を歩かれています。沢足袋とか沢靴とかも一般的に使用されているようです。山靴の場合、後の歩行が楽なように裸足になって渡渉するのもアリかな?とも思います。
愛知川日帰り程度なら本番ほど目くじら立てる事も無いのでしょう。いや最近では本番でも積極的に水の中にルートをとっているのかもしれません。
夏の愛知川ではライフジャケット、ウェットスーツ、浮き輪など持参で水遊びを楽しまれているようです。
水遊びは楽しいものです。但しその陰にリスクが潜んでいることも忘れずにウォーターフロントを楽しんで貰いたいものです。
と言いながら…、家の倉庫には、ライフジャケット…有ります。ウェットスーツ…有ります。カヌーシューズもあります。(沢足袋の替わりになりそう。)
これだけ揃っているんだから僕も水遊びに行ってみようかな?

これがカヌーシューズです。ラバーソールでEBシューズみたいでしょ。