リスクマネージメント

昨日は御在所敗退、本日も朝からのんびり。
二日連続で休養できるのは気分的にもゆったりする。
いや、毎週土日は休みなのだが、その内一日を早朝からの御在所通いに充てている為、のんびり出来るのが正味一日しかない、という状況だ。
週一でも汗をかかなきゃ身体に良くない。云わば健康管理の為に一日を充てている訳で、これは今後も当然の如く続けるつもり。
たまに今回のように二日連続でのんびりすると、妙に新鮮なのである。
日課通りに寝起き読書の後ベッドから這い出し朝刊に目を通す。いつものようにかみさんとシェアしながら。(おかげで新聞がバラバラになってしまいます。)
三面に中高年の山岳事故の記事。「中高年の事故が増えている。」と言われ出して久しい。耳タコである。批判する前にどうすべきか、何が出来るかの議論の時期に来ているのではないか。まるで小学生の学校新聞と同レベルの記事を未だに書き続けている。優秀な大学を卒業した人達の頭の中は、キャリアとは裏腹に滅茶苦茶低次元である。
今、山へ行くのはジジババばかりである。そして年々増加している。年齢層比率、絶対数ともに統計どおりの結果なのである。珍しくもなんともない。調べた訳ではないが、経験数毎の事故比率の曲線も若者全盛期の頃と同じようなカーブを描いているに違いない。
警戒心、注意深さ、慣れによる慢心、技術向上及び経験による事故の回避比率、などは多少経験数軸側でシフトする事はあっても、同じ人間のやる事であり全く同傾向を示す筈である。(クレペリン検査みたいなもの。)
記事の中に気になるものがあった。【近年のあふれる情報と装備のコンパクト化が「登山は簡単」との錯覚を生む。】【最近はNetなどで「登ってきました。」という話が氾濫しており初心者でも安心してしまう。】等等。
本当にそうなのでしょうか。裏づけは? 自重を促す為の記事かもしれませんが、説得力に欠けています。
装備の軽量化については驚きを隠せません。今現在私が持ち歩いている30年前のツェルトは今の軽量テント程の大きさです。重量も同程度かそれ以上でしょう。生活道具一式の他に鉄類まで担いでいた者にとって「1gでも軽くしたい。」と思うのは毎度の事でした。結果として削るのは食料。毎度毎度同じ事をよく続けていたものです。
軽量化は自分自身へのマージンと考えています。軽量化による体力温存、行程への余裕です。そのマージンを原資に難度の高いものへ挑もうとするのは年齢に関係なく人間なら誰でも思う事です。重けりゃ重いなりに、軽けりゃ軽いなりに行程を組むのは時代、年齢に関係の無い事です。
情報の増加、氾濫については弊害があるのは当然です。しかし社会人である以上その弊害を認識している筈です。それが解からないなんていうのは余程のバカか幼稚園児くらいのものです。いや幼稚園児に失礼だったかな?
そこをわきまえた上なら情報は多い方が良い。その情報からそれぞれが必要なものを取捨選択すれば良いだけです。
そして最後に【山が怖いと思わずに登りがち。】と書かれていた。山に限らず自然相手の行動は、怖い面も持っていますがそれ以上に愉しいものです。だから誰もが一度その愉しさを知ってしまうとのめり込んでしまうのです。軽く見るのはとんでもない事ですが、いたずらに怖がる必要はありません。愉しさの裏側に大きなリスクを抱えていることを認識しながら付き合えば良いのです。公園の遊具にだってリスクは存在します。ただ自然相手の遊びは、もともとが我々人間のテリトリーでない事もあって、条件によりリスクがとてつもなく大きくなる事が特徴です。天候次第で街中の公園程度のリスクから生命にかかわる程の大きなリスクへと変化します。常にリスクをマネージメントしながら愉しめば、街中では得られない大きな愉しみが享受できます。
豊富なNet情報から目的地の現在の様子が得られるのはメリット以外のなにものでもありません。初心者を煽動するデメリットとなっているのでしょうか。私は決してそうは思いません。逆に、自分もそこへ行きたい。その為にはこの技術を身に着けなければならない。トレーニングで体力を付けなければならない。と自己研鑽に繋がると思います。
中高年というと仕事を通じ社会で揉まれてきた人達です。根拠の無い精神論で物事が成就する事なぞ無い事を、身をもって体験されてきた人達です。科学的にリスクを管理する方法を身に付けておられる筈です。
年齢、世代に関係なく、「つい調子に乗ってしまう。」ってのが最も危険なもので、これは人間の生理的なものから来ており、一時的な病気あるいは発作のようなものだと私は思っています。異常な緊張や感動によりアドレナリンが大量に放出され、なんでも出来る気になってしまうのです。ランナーズハイをまねて私はクライマーズハイと呼んでいましたが、自分自身がそうなっているのではないか?といつも疑ってみるようにしていました。
手近に入手できるNet情報を最大限活用し、軽量化された道具でマージンを高め、常日頃のトレーニングで身に着けた技術、体力で積極的にチャレンジしましょう。また万一の為の携帯電話、携帯GPSも積極的に使いこなし、事故等で周りに迷惑をかけない山行を続けていただきたいと思います。