鈴鹿の山々

もう10年近くなるのでしょうか。
インターネット・プロバイダが乱立し、でもそのおかげで誰でもが自前のホームページを持てるようになったのは。
確かWin95日本語版が発表された頃と重なっていたような気がします。
当時はインフラが未整備で、アナログ回線でダイアルアップで繋ぐかISDNを新規に引くかのいずれかでした。遅い転送レートを我慢しながらひたすら待ち続けると言った忍耐力が必要不可欠でした。また経済的にも、プロバイダーへの支払いとNTTへの回線使用料の支払いが必要でした。いずれも従量制が採られており、接続時間に比例して支払いも増えるのが一般的でした。
今のようにADSLが一般化し月額一律料金で済む環境からは、想像すら出来ないような不便極まりない環境でした。
そんな中でも先進的な人達はいるようで、個人サイトがどんどん開設されていました。
そのひとつに【鈴鹿の山々】というサイトがありました。
鈴鹿の山歩きを扱った個人サイトの老舗的存在です。「今でもあるのだろうか?」と調べてみたらご健在でした。(前記サイト名でリンクしてあります。)
このサイトは管理者氏の四日市在住時の'96年末〜'98年夏までの鈴鹿山行記録です。山口県への転勤によりそれ以降は【山口の山】というサイトを立ち上げておられます。
たまたま見つけたこのサイトに若い頃の懐かしさを覚え、氏の山行毎の記事のアップを心待ちにするようになっていました。
丁度その頃、積年の運動不足から身体が重い【重病】になっていまして、「健康管理の為に少し歩いてみようか?」なんて思うようにもなっていました。
御在所通いを再開し、今にいたっているのはこのサイトの影響が最も大きいように思います。
何気なく見ていたサイトですが、当時の未発達なインフラに合せた画面構成に、感心させられます。記事は文章だけになっています。要所要所の文章あるいは単語にリンクが張られそれが写真にリンクされています。ダイアルアップでの接続が一般的だったので、文章を読む前に各リンクをクリックし写真を取込んでおきます。すべての写真を取込んだら接続を切り、オフラインでページを見て行きます。そうすればデータ取込みの無い時間を無駄に回線を繋いだ状態で待つ事がなくなります。データ量の従量制でなく時間従量制であるためこんな事をして接続時間の節約に努めていました。
思えば長い間このサイトを楽しんでいたように思いますが、実は2年に満たない間だったのですね。そして、ほぼ毎週御在所通いするようになったのですが、殆どの期間が氏の鈴鹿通いの時期と重なっていたのです。鈴鹿スカイラインが無料化されたのもこのサイトで知り、武平越えをして雨乞岳、綿向山へ足を運んだのもこれ以降の事です。それまでは昔通り蒼滝トンネル西側の駐車場に停めていました。そして昔を懐かしみながら裏道を通り藤内沢出合付近では昔の知り合いに出くわさない事を祈りながら歩いていました。尤もこれは杞憂に終わりました。(この年まで続けている連中なぞ誰もいませんでした。)展望の無い裏道より展望の効く中道の方がずっと楽しく、料金所跡が駐車スペースに変わるとほぼ同時にこちらに停めるようになりました。


このサイトの魅力は氏の謙虚な姿勢も大きなウエイトを占めています。そして臨場感溢れる解説。
濃い緑色の地に緑色の文章とリンクが張られていることを表す黄色の文章、このカラフルさもとっつき易さの一因だったのでしょう。


時代は変わりADSLによる常時接続はあたりまえ、月額固定のプロバイダ料金、サーバー容量の拡大、さらにプロバイダーから提供されるさまざまなTool類。誰でもが簡単にホームページが立ち上げられる敷居の低さ。これらにより利用者が増えれば増えるほどインフラも整って行く。そうすればなおさら敷居が低くなりより多くの人が利用できるようになる。このシナジーもやはりEmergenceなのだろう。
氏の山口転勤によりあまり開く事の無くなった鈴鹿関係のサイトも、自分自身のHP立上げによりまた見るようになった。その時の驚きは筆舌に尽くしがたい。たった数年の間にこうも鈴鹿関連のサイトが出来ていたとは。自分自身もそのひとりなのだが。やはりこれはADSLの普及のおかげだろう。
NTTとしてはADSLの期間を介さずいきなり光への切替えを目論んでいたそうだが、インフラ切替えのステップは小さい程良い。一般の利用者はドラスティックな進歩なぞ望んでいない。ほんの小さなステップでも戸惑う。利用者のリテラシーが高まるのを待ってから次のステップに以降すべきだと思う。結局はNTTの都合なぞに関係なく、市場破壊者、価格破壊者達によって利用者に最大の便宜が計られる結果となった。今のNet流行りはADSLのおかげである。光ファイバーの完全敷設を待っていたら、利用者のリテラシー向上に5年の遅れが出来ていた事だろう。
ちょっと脱線してしまいましたが、個人でINS64を引くにはあまりにも敷居が高かった時代に、こういったサイト(鈴鹿の山々)を立ち上げられていた先人たちには頭が下がります。その影響かNetを介してのコミュニティーが出来上がったり、また多くの人達がサイトを立ち上げたり。結果としてプロバイダー、利用者、関連業者、などで大きな市場が形成されます。そこに参加する個人個人のリテラシーが向上しそれが世の中の常識となり知識社会の底上げに繋がって行きます。


今、主婦の間でNetによる株や他国債権の売買が盛んになっているそうです。
年利1%に満たない定期預金でお金をサボらせているより、4-5%が見込めるものに投資してお金に働いてもらおうと言うわけです。当然元本保証無しのリスクは承知の上です。常に株価や為替に気を配るようになり、絶対にボケない。という副次効果もあるそうです。
こういったこともひとつのリテラシーでしょう。それが出来るのもインフラ普及のおかげ。
そのインフラ普及を陰ながら支えてくれたのは、個人サイトの創始者達、【鈴鹿の山々】の管理人さんたちかもしれません。