雪こんこん 甘えんぼさ〜ん。

週末、雪、給料日とクリスマスのイブイブ。
昼頃から降り続いていた雪が帰宅時には激しさを増し、既に道路も真っ白である。
クリスマスに毎年会社から支給されるケーキがお荷物である。車通勤の頃は気にも留めなかったが、地下鉄通勤で傘を差し鞄とケーキを持ち吹雪の中を歩くのは鬱陶しい。
おまけにケーキというやつ、横にする事ができないのである。少しでも傾かないよう気遣い、湿雪にコートを濡らしながら行くのである。傘なんて薄くなった頭をべた雪の直撃からまもるのが精一杯で、胸から下は見る見るうちに真っ白に染まって行く。ああ、カシミヤが傷む。
こんな日に限ってかみさんのお迎えはないのではないか? なぞと思いながら駅に駆け込む。
改札を通り構内からかみさんにTEL。呼び出し音が続く。厭な予感。
「ただいま電話に出る事ができません…。」
ああ、やっぱり。 なんどかけなおしても同じである。
来た電車に乗り、A駅で乗り換え時に再度Try。やはり駄目。
ああ、K駅から延々20分、ビショタレ雪の中を歩くのか。
ケーキなんてかみさんひとりで食うだけじゃないか。鬱陶しいから捨てて行こうか?なんて勿体無い考えが頭をよぎる。しかしこれが出来ないんですね〜、幼い頃にひもじい思いをした人間には。
なんでこんな日に、だいじな旦那様にこんな辛い想いをさせなきゃならないんだ。それほど重要な仕事をしてるのか? 段取りの悪い馬鹿者どもの尻拭いと、この旦那様とどちらが大切なんだ?
だんだん腹がたってくる。
気配りの無い馬鹿者どもの運転する車が泥水を跳ね上げて行く。その度に跳ねをかけられないように立ち止まって身構える。歩行者に跳ねをかけないように気を配るのは運転者の義務である。そんな事すら気付かない無頓着な愚か者ばかりである。昔はこんなじゃなかった、と思うのは年寄りの愚痴か。


べた雪に濡れ鼠になりやっと帰宅。冷え切った部屋にストーブを点け、コートをハンガーにかける。上着を脱ぎ浴槽を洗いお風呂の準備。暫くすると身体も温まってくる。今日はまだ木曜だが飲んじゃおう。とビールを出す。
今日は寒くて、荷物が持ち難くて、べた雪で濡れて本当に可哀想だったね、よく頑張ったね。と自分を褒めてやる。誰も褒めてくれないから。


夕食後かみさんが帰ってきた。
「寒くて御免ね〜。」
「別に〜。」すねているのである。
「あっ、ケーキがある。雪の中持ち難くてごめんね〜。」
「やらんわ〜。」まだすねているのである。
「ふん、食ったるわ〜。」
やらんと言っても殆どかみさんひとりで食うのは周知のとおりなのである。
我ながら幾つになっても甘えん坊なのである。よしよしと言って貰わないと引っ込みがつかないのである。
いい歳こいて、変なおっさん!