自分への投資

9月初めに今夏3度目の帰省をしていたS司が、月曜の夜東京へ戻って行った。
今回は引越しの為の書類の準備が主な目的だったようだ。9月中旬には新居へ引っ越すとか。新築2階建ての一階部分、1DKで約7万円/月。敷金、礼金、諸経費で30万円ほど必要とか。
かみさんが許可したのなら口を挟む事も無いが、「なんでこの時期に?」留年で思わぬ出費を強いられた上、なんでそんな無駄な事をするのだろう。お金の重みが全く理解できていないのではないか。
普通の神経なら「留年で負担をかけているのだから我慢しよう。」と考える筈。S司にはそんな一般常識が全く欠けている。それを許すかみさんも溺愛のし過ぎだ。
しかしなあ…、今のアパート、地震がきたら一発で倒壊だろうな。命には替えられないか。…という事で無理やり自分を納得させる。
もう向こうに根を下ろす気なのだろうか? その布石としてまともに住める所を確保したのだろうか?
S司はボーっとしている反面、妙にクレバーな所がある。大学模試でもわざと間違えて、この点ならB評定、この点ならC評定と操作していたふしがある。今の学校も家を出る為に「ここしか行けない。」と芝居をうったような気がする。おかしいと思いながらも騙されるのは親バカの所為か。
石原慎太郎氏の【弟】にもあったように、兄(慎太郎)は生真面目で家計を思い切詰めた生活をし、弟(裕次郎)は自由奔放に放蕩遊興を繰り返す。
どうも男兄弟というのはどこの家でも同じ所業を繰り返すようだ。
S司が帰った後のお通夜状態のところにT哉が帰ってきた。話す事柄からしてけちくさい、みみっちい。そして暗い。親の負担にならないようバイトにせい出している。欲しいものも我慢している。住む所も学校の寮で費用はS司とは雲泥の差で少ない。
話の暗さにかみさんが切れてしまい、「ノートPCくらい買いなさい!」ずっと我慢していたらしい。私もつられて「今は自分に投資する時期だろ。バイトで時間を失うより金をかけてでも自分に投資しろ。」
S司ばかり無駄遣いしていてT哉は切詰めてばかり。可哀想で涙が出てきそうになる。そしてS司に腹が立ってきた。この鬱憤を傍にいるT哉にぶつけ厳しい物言いになってしまう。つくづくT哉は損な役回りだ。いかんいかん、フォローしとこう。
「就職してからしっかり稼いでもらわにゃいかんからなあ。でなきゃワシ養って貰えん。」と冗談っぽく、半分本気で。